パンクロッカーといえども人間です。
当然ですが、生きていくためには人はお金が必要となります。
パンクロッカーも何とかして生活を成り立たせるだけの最低限のお金を稼ぐ必要があります。
では、パンクロッカーがお金を稼ぐ最適な方法とは何でしょう。
まず思いつくのはヒモです。
ヒモとは、交際している女性に経済的に依存し、自分は働かずして食べていく方法です。
これは十数年ほど前まではパンクロッカーの生活手段としては、大変魅力的なものとされていました。
労働という自活手段の放棄に加え、愛情というあやふやな物に依存して生命を繋ぐ様が、大変危なっかしくパンク的だったからです。
また、女性に経済的に依存する姿は、世間から鼻つまみ者・落伍者として扱われるというメリットもありました。
しかし、残念ながら、昨今ではそのような風潮は薄れつつあります。
それは一つにはジェンダーに関する、より積極的な認識が社会に広まってきたためです。
日本でも90年代から伊藤公雄氏がさきがけとなって男性学運動が始まり、必ずしも仕事が男性の生きがいであり、唯一の自己実現ではないという認識が徐々に浸透しつつあります。
つまり現代では、専業主夫というあり方も決して一概に否定されるものではないと、考えられ始めているのです。
あなたは、ただパンクロッカーとしてヒモという生活手段を選択したつもりかもしれませんが、世間からはジェンダーフリー思想の最先端を行くものとして捉えられてしまう危険性があるのです。
そのような誤解を避けるためにも、真に残念ながら、ヒモという選択肢は放棄するべきでしょう。
全く、困った世の中になったものです。
では、パンクロッカーが実践すべき有効な生活手段とは何でしょうか。
ヒモはすぐに思いつくけれどその次に来るものは何だろう…と多くの人は考え込んでしまうことでしょう。
困った時は、何事も原点に戻るべきです。
そうです、やはりここでも答えはセックス・ピストルズにあったのです!
ピストルズが活躍した1970年代当時のイギリスは、深刻な不況に喘いでいました。
当時イギリスの失業者数は200万人に達し、青年層だけでも約70万人の若者が失業状態にあったのです。
肉体労働にありつければまだマシで、多くの若者たちは失業保険で暮らしていくしかありませんでした。
そして、我らがセックス・ピストルズの面々も、そのようにして生計を立てていたというのです。
つまり、私たちも偉大な先人に倣い、失業保険により生計を立てるべきなのです。
では、失業保険を得るための具体的な方法を提示しましょう。
失業保険を得るためには、何といっても、正社員になることが最も簡単で確実な方法です。
アルバイトでも場合によっては失業保険を得ることは出来ますが、雇用保険が任意加入になることも多く、全て自分で手続きすることになると大変面倒です。
その点、正社員になれば会社側がそれらを全てあつらえてくれます。
正社員になることが、失業保険を手にする一番の近道なのです。
ですから、あなたはまず就職活動をするべきです。
もちろん、どこへ就職しても良いというわけではありません。
失業保険は就労時のサラリーの何割かが支給されますから、出来るだけサラリーの高い一流商社に就職を心掛けるべきです。
もちろん、就職の際には自分がパンクロッカーであることは伏せましょう。
一般的な会社ではパンクロッカーを好んで雇うことは、ほとんど有り得ないからです。
面接時には、パンクのパの字も知らない、マジメ一辺倒の人間であるかのように振舞うべきです。
あなたはもしかしたら、「就職なんてしていたらファッションパンクと思われるんじゃないだろうか」と心配するかもしれません。
しかし、それは全くの杞憂というものです。
失業保険を得るための就職だと言えば、「ああ、パンクだな」と誰もが納得してくれるでしょう。
いえ、むしろ就職もせずに、その日暮らしで生計を立てている人こそファッションパンクというべきです。
彼らは、正しいパンクロッカーになるために失業保険を目指す、という当然の努力を怠っているからです。
そのようなパンクロッカーとしてのあるべき態度をとらず、ただ見てくれだけを真似するファッションパンクの何と多いことでしょうか。
失業保険を得るために、計画的に就職・就労するのが本物のパンクロッカーなのです。
ですが、ここだけは忘れないよう気を付けてください。
あなたが就職をするのは、決して労働で生計を立てるためではなく、失業保険を得るための手段に過ぎないということです。
うっかりとその職場に愛着を持ったり、仕事に魅力を感じてしまえば、その時点であなたはファッションパンクです。
そうならないためにも、6ヶ月間就労した後はただちに失業するべきです。(失業保険は6ヶ月間の就労の後に失業した人に支払われます)
失業に関しても、気を付けたいポイントが2つあります。
まず1つは、自己の都合による失業(退職届など)の場合は、失業から3ヶ月間は失業保険を受け取れないということです。
3ヶ月の間に飢え死にしないように、3ヶ月分だけの貯蓄はキープしておきましょう。
もう1つは、自己の都合による退職よりも、会社の倒産や解雇などにより失業した場合の方が、給付日数などの面で手厚い待遇を受けられるということです。
このことを鑑みれば、今すぐにでも倒産しそうな会社に就職するというのも一つの手ですが、しかし6ヶ月就労する以前に倒産されてはたまったものではありませんし、そのような会社では給料の未払いが生じるかもしれません。リスキーですので、オススメはできません。
それよりも、ちゃんと安定した一流企業に就職しつつ、6ヶ月後にリストラされるよう仕向ける方が良いでしょう。
あなたはパンクロッカーですから、就職して数日もすれば顔面に酷い青痣を作ったり、酒臭い息を吐き散らしながら出社することになるでしょう。
周りの同僚・上司も、あなたがパンクロッカーであることに薄々気付き始めるはずです。
そして、「自分がパンクロッカーである」という情報を巧みに流しつつ、うまく6ヶ月後にリストラされるよう社内の風評を誘導しましょう。
初心者のうちはなかなかそれが巧くいかず、失敗して1年も2年もリストラしてもらえないこともあるかもしれません。誰でも、最初はそんなものです。
しかし、何度もトライ・アンド・エラーを繰り返していけば、あなたはいずれ、きっちり半年後にリストラされるような立派なパンクロッカーになれるはずです。
最初は辛いかもしれませんが、頑張ってください。
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