STEP7 「ライブをしよう」



メンバーを集め、練習を重ね、衣装を用意したあなたは、ついにライブを行うまでに至りました。
ですが、ライブというものはやろうと思ってすぐに出来るものではありません。
何事もそうですが、やはりライブをするにも正しい手順というものがありますし、それらの過程を適切に踏んでいかねば正しいパンクのライブは行えないのです。
ここでは正しいパンクライブを行うために必要なプロセスを解説していきます。

・デモテープを作ろう

ライブを行うに当たり、あなたは最寄のライブハウスに出演の意志を伝えることになりますが、この時に必要となるのがバンドの演奏を収録したデモテープとバンドのプロフィールです。
一般的にライブハウスに出演する際には、これら2点が必要となり、それらをもってライブハウス側は、あなたのバンドをそのライブハウスに出演させるかどうかを判断するのです。
たかがデモテープ、たかがプロフィールと侮ってはいけません。
ライブハウスというのは、いわば音楽のプロです。これまでも数多くのバンドに接しています。
彼らの目は確かです。もしあなたたちがファッションパンクであったなら、彼らは即座にそれを見抜き、出演は無碍に断られてしまうでしょう。
あなたたちは、判断材料たるデモテープ、プロフィールに至るまで、己のパンク魂をぶつけて製作しなければならないのです。
ここではまず、ファッションパンクと誤解されない、正しいデモテープの作り方を紹介します。

まず勘違いして欲しくないのは、デモテープといっても、別に売り物を作るわけではないということです。
MTR(MultiTrack Recorder)などを使ってキッチリとした物を作る必要はありません。
スタジオでの練習を録音したテープで十分です。
前述の通り、ライブハウスも音楽のプロですから、スタジオでの練習テイクでもあなたたちの演奏力を計るには十分なのです。

では、どのようなスタジオ練習をテープに収めればよいのでしょうか。
普通のバンドであればこう考えるでしょう。
自分たちの演奏できる曲で最も演奏力に自信のあるものを何度か繰り返し演奏し、その中で最も優れた演奏をデモテープにしよう、と。
これは方法論的にはまったくその通り。正しい方法です。
そしてこれは、そのままパンクバンドにおけるデモテープ製作にも応用可能なのです。

これまで散々繰り返してきたことではありますが、パンクバンドが己のパンク魂を強調するには、何といっても演奏技術の拙さをアピールするのが一番です。
自分たちが一番稚拙だと認識している曲を選び、最も演奏のへたくそなテイクをデモテープにしましょう。

ですが、ここまではどのパンクバンドもやっていることです。このデモテープの作り方はいわば初級編といったところでしょう。
ここからは一歩進んだデモテープの作り方をお教えしましょう。

先ほどのデモテープは、パンクバンドにとって最も大切な「技術の拙さ」をアピールすることはできますが、しかし、それだけのものでしかありません。
デモテープの演奏は良かったけれど、実際にライブをやってみると、客を殴ることはおろか唾を吐き棄てることさえしない、そのようなファッションパンクも多く、演奏を収めたデモテープだけで真のパンクバンドか否かを判断するのは耳の肥えたライブハウス店員でも難しいのです。
ですから、あなたは自分たちの拙い演奏のみならず、プラスアルファーをデモテープに付加するべきです。
そう、あなたたちが加えるべきは、パンクバンドらしい暴力性です。

デモテープで暴力性を表現するにはどうすれば良いのでしょうか。
簡単ですね。曲の途中で暴力を振るえば良いのです。
途中で演奏を止め、メンバー間で殴り合ってもいいですし、全員でドラムセットを叩き壊しても構いません。
ただし、ここで気をつけたいのは全員でドラムセットを殴ることはOKですが、全員でドラマーを袋叩きにしてはいけないということです。
何故なら、それではマリリン・マンソンになってしまうからです。

このときに大切なのが、各人が大きな声ではっきり明瞭に罵声を轟かすことです。
「クソッタレー」「死んでしまえ」「Fuck You!」「Shit!」
などが罵声としては相応しいでしょう。
あなたたちはケンカに移る前は一応演奏をしていたのですから、アンプやマイクで増幅された音量に負けないよう、大きな声でそれらの罵声を轟かせなければなりません。
この時の声が小さいと、ライブハウスの店員は途中でテープが終わってしまったのかと勘違いしてしまうからです。
テイクに入る前に、各々が台詞を決めておき、また発声練習などをしておくと良いかもしれませんね。
ちなみに、発声練習でいちばん練習しやすいのは「ハ行」です。ここから練習を始めると良いでしょう。

あなたはデモテープにケンカや罵声を含ませることで、拙い演奏のみならず暴力性をも表現することができました。
演奏力ばかりに気を取られるバンドが多い中、暴力性に着眼したあなたたちは、まず間違い無くデモテープ審査をクリアーできると思います。
ですが、このデモテープも100点とは言えません。
この手法で作られたデモテープは限りなく100点に近いものですが、真に100点と呼ばれるに相応しいデモテープは以下の手法をもってしか作ることはできないのです。

いいですか。

「あなたたちはパンクバンドです。」

そして、

「パンクバンドとはピストルズです。」

ですから、

「あなたたちはピストルズ」

なのです!

お気付きですね。
そうです!あなたたちが自分たちのことをパンクバンドだとアピールするには、ただセックス・ピストルズの音源をテープにダビングし、それをデモテープとするだけで必要十分なのです。
上の三段論法からも明らかな通り、あなたたちはピストルズなのですから、ピストルズの音源があなたたちのデモテープで間違いないのです。
これほど簡単簡潔なデモテープ製作法がありながら、ほとんどのパンクバンドがこの手法を用いないことが私には不思議でなりません。
この手法を用いたデモテープを持ち込めば、賞賛されることはあっても追い返されたりすることはありません。
もし万一このテープを持参し断られたならば、それはテクノ専門のライブハウスだったのです。
これは諦めるより他に仕方がありません。
100点満点のデモテープを持参してもダメなのですから、他に方法は一切ありません。
いえ、むしろそんなライブハウスはこちらから願い下げです。
唾でも吐きかけてやりましょう。

なお、パンクバンドを初めて間もない人の中には、果たしてこんな丸々コピーのデモテープで大丈夫なのだろうか、あの三段論法だけでは不安だなあ、と思う人もいるかもしれません。
確かに、あの三段論法だけでは論理的に頼りなく感じるところがあるかもしれません。
そういう人のために、以下に注釈を用意しました。
以下の注釈では上述の三段論法を論理学を用いて証明しております。
これを理解すれば、自分たちがピストルズの音源をそのままダビングしてデモテープにすることの正当性を確信できることと思います。
ちなみに、以下の注釈は上述の三段論法に何ら疑問を抱かない方は飛ばして頂いても支障はありません。

《注釈》

「俺達はパンクだ」
「パンクはピストルズだ」
「よって俺達はピストルズだ」

この三段論法が論理的に正しいことを証明してみましょう。
全ての前提が正しければ結論が論理的に正しいということになりますから、

(1)「俺達はパンクである」は正しい
(2)「パンクはピストルズである」は正しい

この二つが証明できれば良いわけです。
ここで、「俺達はパンクである」という命題をpunkのpを取って「P」とし、「パンクはピストルズである」という命題をpistolsのpを取って「P」とします。
そして、その命題が妥当であること、正しいこと、つまり「真である」ことを「1」、妥当でないこと、正しくないこと、つまり「偽である」ことを「0」のように表した数字のことを真理値と言います。
すると、(1)(2)はそれぞれ

(1)P=1
(2)P=1

という式に表せます。
これらが正しい、妥当である、と考えられる場合、私たちの「俺達はピストルズである」という考えは正しいという事になります。
ですが、よく見てみると(1)(2)は

(3)P≡P  (P=1=P)

上記のようにまとめられることが分かります。
このように、命題と命題を論理記号でつなげて関係を表した式を論理式といいます。
よって、この論理式(3)が真であれば、結論「俺達はピストルズである」が正しいという事が証明されたことになります。
したがって、以下でこの論理式を真理値分析し、その正しさを検証してみましょう。

真理値分析とは、それぞれの命題が「1」または「0」であるとき、その命題の間の関係を表した論理式が「1」になるのか「0」になるのかを計算することを言います。
そしてそれら各命題とその真理値と、各論理式その真理値とを表にしたものが真理値表です。  

ここで、上の表を真理値表にしてみると、次のようになります。

s P  P s s P≡ P s
0  0
1  0
0  1
1  1




表の左側の枠は命題PとPがそれぞれ真または偽であるという場合分けを表していて、「1 0」となっているところは「Pが真でPが偽の時」という意味になります。
?はこれから分析する論理式「P≡P」の真理値が入ります。  

「P≡P」は論理学的にはトートロジーと呼ばれる論理式で、「それに含まれる命題の真理値に関係なく真(つまり1)となる式」とされています。
したがって、「P≡P」は左側の場合分けに関係無く、常に1、つまり真となるので、分析後の真理値表は以下のようになります。

s P  P s s P≡ P s
0  0
1  0
0  1
1  1




上記の通り、「P≡P」は常に、どんな場合でも正しいことが明らかです。
これにより、「俺達はピストルズである」は完全に正しいということが、論理的に証明されるのです。

・プロフィールを作ろう

前述の通り、ライブハウスの審査を受けるためには、デモテープと共に「プロフィール」が必要となります。
プロフィールはとても大切なものです。
単なる文字情報に過ぎないプロフィールですが、「出演を希望する意欲」や「将来の展望」「音楽への情熱」など、デモテープだけでは伝えきれない様々なことをアピールできるからです。
ライブハウスはこのプロフィールを元に、どんなバンドと対バンを組ませるか、熱心に活動しているか、などを判断するのです。
ですから、コピーバンドだからといって、単に「ピストルズのコピーをしています」だけではダメです。
文章の上手い下手は関係ありません。自分たちの個性や目標、PRは必ず書けるはずです。
とにかく、自分たちがいかに音楽に対してやる気がないのか、自分たちがどれほどのパンクロッカーであるのかをライブハウスに伝えるよう努力しましょう。
また、「自分たちはファッションパンクではない」ということは執拗なまでに強調しましょう。
とにかくファッションパンクと誤解されることが何より恐ろしいのですから、ファッションパンクではない、というアピールは、どれほどやってもやり過ぎということはありません。
ホンモノのパンクロッカーだということを、はっきり何度も明記することが重要です。
とにかく、まずは言葉で伝えるのです。

そして、このようなプロフィール作製こそ、まさにマネージャーの仕事です。
マネージャーは自分たちのパンクバンドを売り出すために、ショッキングで人目を引く、過激なプロフィールを書かなければなりません。
少々の脚色もやむを得ません。メンバーから反撥があるかもしれませんが、結果を出して捻じ伏せましょう。

では、実際に使われているパンクバンドのプロフィール例を元に重要なポイントを解説していきましょう。
これは「ダイナマイツ」というパンクバンドのプロフィールで、彼らのプロフィールにはパンクバンドにとって大切なファクターが全て詰めこまれています。
下記の実際例から、プロフィール作製に必要なテクニックを学びましょう。

■プロフィール例(バンド名)

《ダイナマイツ》
オレたちはダイナマイツだ。
バンド名はその名の通り、ドガーン!となってボガーン!という、感情の発露としてのパンクをやっているぜ!
言っておくが、オレたちはファッションパンクじゃねえぜ。
Shit!ホンモノのパンクロッカーはオレたちだけだ。
今の腐りきったロックシーンに、本当の革命を起せるのはダイナマイツだけだ!
パンク気取ってラブソング歌ってやがるその辺のヘボどもをまとめて爆死させてやるから覚悟しやがれ!クソッタレー!

(活動歴)
1998年11月 結成
1999年2月 ファーストライブ(寝過ごしてライブはしなかった)
1999年5月 セカンドライブ(酒を呑んで誰も演奏できなかった)
1999年8月 サードライブ(暑いから誰も来なかった)
1999年12月 4thライブ(寒いから誰も来なかった)

(中略)

そして、オレたちは伝説となる......


まずは、自分たちのバンド名と、その名に込めた想いなどを熱く語りましょう。
上記の例ですと、「ダイナマイツ」というバンド名が“感情の発露”であること、つまり自分たちのメッセージが正しくパンク的であることをアピールしています。
またバンド名はその名の通り、ドガーン!となってボガーン!という、感情の発露としてのパンクをやっているぜ!」と、明らかに日本語がおかしいことからも、いかに感情に任せてこのプロフィールを書き上げているか、またそのテンションが凄まじいものであるかを感じさせます。
もちろん、これはマネージャーの創作なのですが、あたかも本当にメンバーが書いているかのような臨場感が伝わってきます。実に良い仕事です。

また、感情に任せて書いているように見せかけながらも、
「その辺のヘボどもをまとめて爆死させてやる」など、バンド名に絡めたレトリックを用いたり、「Shit!」「クソッタレー!」など、それだけでパンクロックをイメージさせる単語をリズム良くテキストに盛り込むことで、アクセントとしています。

さらに、活動歴を見ると全然ライブが出来ていないことが分かり、ライブハウス側に「こいつら音楽やる気が無いな。パンクだ!」という印象を与えることに成功しています。
極め付けは、締めの「そして、オレたちは伝説となる......」です。
言葉の意味は良く分かりませんが、とにかくすごい自信です。

■プロフィール例(メンバー)

まなぶ(まなぶ) Vo. 出身地:ロサンジェルス県
8年間アメリカで過ごしキックボクシングを学ぶ。
帰国後、中学3年でブラジルへサッカー留学する。
続けて、ドイツへサッカー留学した後、帰国。
バイクの免許を取り、100人の暴走族の頭となり、同時に米軍基地へと乗りこみ米兵相手にライブとケンカをする。その最中にも英検一級を取得。
現在はパンクバンド「ダイナマイツ」を結成。リーダーであり、ボーカル。
煮えたぎるような情熱と、ドガーンという感じのボーカリングが特徴。
ファッションパンクではない、ホンモノのパンクロッカーである。

たろう(たろう) Ba. 出身地:ロンドン県 
中学生の頃、家を飛び出して、上京。
名前は専門学校時代からの友人である、まなぶが飼っていたハムスターの名前から付けられた。
いつでもどこでも目立っちゃう人気者で、人の気持ちが分かるパンクベーシスト。
浮浪児の「タイショー」、金持ちの「リボン」などと交遊を重ねる。
ロコ(本名:春名ヒロ子)という女性と数年にも渡る同棲生活の後、現在は「ダイナマイツ」のベーシストとして活躍中。
激しいパフォーマンスの最中にも、小動物のような愛くるしさを見せる。
ファッションパンクではない、ホンモノのパンクロッカーである。

じぶら(じぶら) Gt,.&Cho. 出身地:東京 
東京生まれ。
悪そうな奴は大体友達で、裏の道を歩いて見てきた。
渋谷や六本木に思春期の頃ぞっこんになり、高校に鞄を置きっぱなしにし、親に迷惑をかけていたが、今では雑誌のカヴァーであり、そこら中でDON DADAと幅を利かせている。
マイクを掴めば本気でNo.1であり、東京代表トップランカーでもある。
仲間や親やファンたちに感謝しつつ荒れたオフロードを進んでいた。
現在は「ダイナマイツ」のギタリスト兼コーラスとして、ギターでもコーラスでも、激しいプレイを見せる。
ファッションパンクではない、ホンモノのパンクロッカーである。

どらみ(どらみ) Dr. 出身地:富山
女のような名前だが、男。
幼い頃の事故で両耳を失った兄を持つ。
兄が上京した後、不甲斐ない兄に業を煮やし上京したどらみだったが、兄の友人のあまりの出来の悪さに呆れ果て、どらみ自身も荒んだ生活を送りつづける。
だが、パンクと出会うことで精神的に立ち直ったどらみは、兄やその友人との関わりを絶ち、数々のパンクバンドにてドラマーを歴任する。
現在は「ダイナマイツ」のドラマーとして、怒りに任せた激しいドラムプレイでダイナマイツを支え続けている。
好物はメロンパン。

ファッションパンクではない、ホンモノのパンクロッカーである。

この「ダイナマイツ」メンバーのプロフィールには言うまでもなく、かなりの脚色が見られます。
ダイナマイツのマネージャーは彼らの経歴をドラマティックに演出するべく、様々な偉人・有名人を参考にしつつ、彼らのプロフィールを作り上げたのです。

これほどのプロフィールを書けとはいいませんが、しかし肝に銘じておいて欲しいのは、プロフィールには真実を書く必要など毛ほども無いということです。
プロフィールなんぞ、所詮口先だけの言葉遊びです。
せいぜい巧言令色を重ね、ライブハウスを喜ばせれば良いのです。仁の多少など関係ありません。
パンクバンドのマネージャーには、このような割り切った心構えが必要であることをしっかりと自覚しておいてください。
パンクバンドの求めているマネージャーは真摯で誠実なマネージャーではありません。
ビジネスライクに何事も割りきれるマネージャーなのです!

・ライブハウスにブッキングしよう

さて、あなたはデモテープ、プロフィールといったライブハウスに提出すべきアイテムを無事揃え終わりました。
いよいよ、ライブハウスとの出演交渉です(なお、ライブハウスとの出演交渉をパンク専門用語で『ブッキング』といいます)。
そして、ブッキングもマネージャーの大切な仕事の一つです。

まずは、どのようなライブハウスでライブを行うのかを見定めましょう。
一口にライブハウスといっても、様々な規模・設備・雰囲気の場所があります。
その中から、自分たちのバンドに合ったものを探し出すのです。

では、具体的にどのようなライブハウスがあるのでしょうか。
まずキャパシティー(収容人数)ですが、これは小さいところでは30人も入れば一杯になってしまうものから、大きいところでは1000人も入るようなライブハウスまで様々です。
最初のうちは50〜100人規模のライブハウスをブッキングすればOKでしょう。

また、ほとんどのライブハウスでは飲食をすることが出来ます。
席に着き、食事をしながらゆっくりライブを楽しめるライブハウスもあれば、メニューはドリンクのみで薄暗い雰囲気の店もあります。
もちろん、あなたたちはパンクロッカーですから、お客さんにゆっくり食事を楽しませるような失礼なことをさせてはいけません。
常に薄暗く、テーブルも椅子もなく、ドリンクは酒のみ。このようなライブハウスを選びましょう。
また、注文したビールが生温いかどうかも重要なポイントです。
ビールが生温い店は、サービス業という意識が低く、店員のやる気が無いからです。
そのような店を率先して選びましょう。

他にライブハウス選別に関して気を付けたいポイントは以下の通りです。
  • 周りがスラム
  • 窓が割れている
  • 雑居ビルの地下にある
  • ねずみが出る
  • 水が滴っている
  • かび臭い
  • マイクスタンドが曲がっている
  • シンバルが割れている
  • 店員が明らかにパンクロッカー
お気付きの方もいるかと思いますが、上記の留意すべきポイントは「STEP5 スタジオを借りよう」と被っている点が多いですね。
そうです。パンクロッカーも、そのお客さんも、基本的に望ましい環境は同じなのです。

さて、理想的なライブハウスを発見したら、さっそくブッキングです。
念のため、あらかじめ電話かメールでライブハウスに問い合わせましょう。
聞いておきたいことは、審査に際し必要なものと、それらを何時手渡せば良いか、です。
審査に際し必要なものは多くの場合は上述のデモテープとプロフィールですから、まず問題は無いでしょう。
ごくまれにメンバーの写真を要求してくるライブハウスもありますから、そういうときはメンバーが泥酔して倒れている様子でもパチリと撮って、それを付け加えれば問題ありません。血を流している写真があればモアベターです。

ライブハウスの担当者と相談し、資料を手渡す日時が決まったあなた。
ここまではマネージャーの仕事ですが、実際にライブハウス担当者に資料を渡す時は、出来る限りメンバー全員で押しかけましょう。
その時のメンバーの雰囲気や人となりから、ライブハウス担当者は、あなたたちがパンクロッカーかどうかを判断できるからです。
自分たちがファッションパンクではない本物のパンクロッカーであることを証明するチャンスですから、この機会は逃さず利用したいところです。

ライブハウス担当者に良い第一印象を与えるためには、少々の演出も必要となります。
ここでいう演出とは、もちろん、自分たちが本物のパンクロッカーであることを印象付けるための演出です。
具体的には、あざの一つや二つは欲しいところですね。
そのために、マネージャーは前日に彼らがケンカをするよう、上手く誘導しましょう。
酒を呑ませて気を昂ぶらせるなどの細やかな気配りも必要です。

顔面に大きなあざをこしらえ、メンバーの容貌が良い感じで凶悪になったら、彼らを引き連れてライブハウスへと向かいましょう。
普通の人であれば、メンバーの様相を見ればぎょっとして呑まれてしまうものですが、しかし、相手は海千山千のライブハウス店員、その程度では小揺るぎもしません。
そこで、あなたはもう一つの演出を仕掛ける必要があるのです。

重要なのは、泥酔したベーシストだけ駅前に放置してくることです。
そして、あなたたちはライブハウス担当者と向き合った後、わざとらしくベーシストがいないことに気付きます。
その時、頃合を見計らったかのごとく、最高のタイミングでマネージャーの携帯電話に連絡が入ります。
それは泥酔し倒れていたベーシストを保護したという連絡です(前もって誰かに頼んでおきましょう)。
マネージャーはライブハウス担当者に断りを入れて、急いで彼を連れてきます。

このとき引っ張って来られたベーシストは、次のような状況であることが望ましいです。
まず顔にはケンカでできた大きなあざ。唇には切り傷。ボロボロの衣服。靴は片方ありません。
泥酔によりフラフラとした足取りで、「Shit!クソッタレー!」など暴言を吐き散らします。
そして、着いた早々、担当者の目の前でこれ見よがしに嘔吐します。
海千山千のライブハウス担当者といえども、流石にこれほどのパンクロックを目の前で見せつけられれば怯まずにはいられません。
ライブハウス担当者があなたたちのパンク魂に呑まれたならば、まず間違いなくあなたたちの「勝ち」です。
あなたたちの持参した完璧なデモテープ・プロフィールもありますし、出演を断られることはまず有り得ません。
もし、ここまでして断られたのであれば、そのライブハウスはテクノ専門だったということです。
唾でも吐き棄てて帰りましょう。

・ライブを宣伝しよう

無事にライブのブッキングに成功したならば、その日に向け、自分たちのライブを宣伝しなければなりません。
ライブを宣伝する方法には数種類あります。
以下に、主な宣伝・告知手段を紹介します。

1、チラシ・ポスター
2、インターネット
3、新聞・雑誌広告
4、DM(ダイレクトメール)
5、口コミ

この中で最もポピュラーであり、最も実践しやすいものは1のチラシ・ポスターによる宣伝方法です。
3の新聞・雑誌広告は初めてライブをしようというあなたには少し敷居が高いでしょうし、4のDMもある程度ライブを重ねお客さんの住所を把握しないとできることではありません。
ここは、1のチラシ・ポスターを基本としながら、2のインターネットを併用し、かつ5の口コミを最終的には利用する方法で宣伝・告知戦略を考えていきましょう。

しかし、チラシ・ポスター・インターネット・口コミを利用して宣伝活動をするにしても、その内容は何でもいいと言うわけではありません。
あなたたちはパンクです。誰にも媚びない、それがパンクです。
ですから、そのチラシを見た人が喜ぶようなことを書いてはいけないのです。

もし、あなたが
「お客さんと楽しくノれるライブです」「僕たちと一緒に楽しみましょう」
などと書かれたパンクバンドのチラシを見たらどう感じるでしょうか。
「こいつらパンクじゃねえな。ファッションパンクめ!」
そう思うことでしょう。
あなたたちはパンクロッカーですから、あなたたちがお客さんに近づこうとすればするほど、お客さんはあなたたちから遠ざかってしまいます。

さらにまずいことには、あなたたちがパンクロッカーであるにも関わらずそのような甘い言葉を弄してお客さんを獲得した場合、そのお客さんはポップミュージックが好きな人であるかもしれないのです。
そのようなお客さんがあなたのライブに来た場合、あなたの激しいライブに耐えきれず精神的にも物理的にも傷を負ってしまうことでしょう。
そして、そのようなお客さんの痛ましい姿を見て、あなたの心も傷つくでしょう。

いいですか。
人にはそれぞれ適切な距離関係というものがあるのです。
パンクロッカーにはパンクロッカーの。ポップミュージックにはポップミュージックの距離があるのです。
それらを曖昧にしてごちゃまぜにしてしまえば、結局のところ、お互いが傷つけ合うだけなのです。
パンクロッカーは、そういった距離関係を把握し、傷付けあわないが疎外感も感じない、お互いのベストな立ち位置を見出さなければならないのです。
これをパンク専門用語で『ヤマアラシのジレンマ』といいます。

また、就職履歴書では無いのですから、自分たちの長所や得意なことをアピールしようとしてはいけません。
いえ、むしろ自分たちに不利になるようなことを書くべきでしょう。
自分たちの悪口を積極的に広めることにより、広く自分たちのバンドが人口に膾炙することになるからです。
なぜなら、一般的に人間というものは、他者を誉めることは滅多にしなくとも、他者をけなすことなら嬉々としてやりたがるものだからです。
このような人間の習性を利用した宣伝方法は、『ネガティブキャンペーン』と呼ばれ、パンクの始祖セックス・ピストルズも愛用した手法です。
あなたたちは、この『ネガティブキャンペーン』をチラシ・ポスター・インターネットなどで行うことで、人々が自然とあなたたちの悪口をまくしたてるように仕向けなければなりません。
前述の通り、人は他人の悪口を言うのが三度の飯より大好きですから、いったんあなたたちの悪印象が広まれば、あなたたちのことを何も知らない人でさえ、我が意を得たかのようにとうとうとあなたたちの悪口を言いふらしてくれるはずです。
パンクバンドにとって、これほど都合の良い宣伝塔はありません。
バンドにこのようなイメージを付与し、また人心を操作し、人々が自分から嬉々としてバンドの悪口を言い出すような状況を設定するのはマネージャーの大切な仕事です。

では、具体的なネガティブキャンペーン用のビラを見ていきましょう。
以下は、実際にネガティブキャンペーンで使用されたパンクバンドのビラです。


■チラシ例

あなたの魂の清浄を保つため、ダイナマイツのライブを見ないで下さい!

あなたがこのチラシを手にしたならば、できるだけ多くの人にこのことを呼びかけてください。
パンクバンド“ダイナマイツ”のライブは、参加しただけで魂が汚れ、永久に救われぬ地獄へと落ちることになります。
なぜなら、彼らのライブは一見するとロックミュージックのライブのようですが、その実は恐ろしい悪魔崇拝の儀式に他ならないからです。
また、彼らの発する音楽には毒電波が含まれており、聴くだけで若者の脳を腐らせてしまうのです。
その証拠に、私の耳には明らかに雑音にしか聞こえない彼らのライブに、多くの少年少女が歓喜の声を上げ、我を忘れて踊り狂っているのです。私にはとても正気の沙汰とは思えません。明らかに、ダイナマイツの発する毒電波による影響です。
また、彼らのライブでは壇上のダイナマイツメンバーを中心として、彼らの信奉者たる少年少女たちが酒・タバコ・ドラッグなどを用い彼らの周りで騒ぎ立てます。
これは明らかに中世ヨーロッパなどで行われたサバトの再現であり、このことからもダイナマイツがサタンと血の契約を結んでいることは明らかです。
彼らのライブの後は、あまりの興奮から自我を失う者、ライブ中に怪我をして血を流している者など、まさに惨憺たるありさまであり、そのような状況に陥ってなお、ダイナマイツの信奉者たちは彼らに対して絶対服従を誓っているのです。もはや、彼らのまともな社会復帰は不可能と断言して良いでしょう。

さらに、ダイナマイツは彼ら信奉者を生贄に捧げるだけでは飽き足らず、その毒牙を他の善良なミュージックグループにまで及ぼしているのです。
みなさんもご存知のことと思いますが、先月解散したAというメジャーバンドは、彼らダイナマイツの悪魔的な魔力によって解散を余儀なくされたのです。
一介のインディーズバンドに過ぎないダイナマイツにそれほどの力があるわけがないと、みなさんはお思いになるかと思いますが、ダイナマイツがサタンとの契約を交わしていることを忘れないで下さい。
ダイナマイツはサタンに自分たちと信奉者たちの魂を売り渡すことで強大な力を得ているのです。
メジャーバンド一つを解散に追い込むことなど彼らにとっては造作ないことなのです。

このように、ダイナマイツの毒牙にかかり私の大好きなAは解散となってしまいましたが、ダイナマイツはこれからも私の大好きなバンドを次々と解散に追い込むに決まっています。
そうなる前に、私たちが善なる光によって目を覚まし、逆に彼らを解散に追い込まなければならないのです。

また、彼らのCDを購入することも大変危険です。
先日発売された彼らのCDの11曲目「Kill You!」には恐るべき秘密が隠されているのです。
もし、手元に彼らのCDがあれば11曲目を逆回しにして再生してみてください。
1分17秒のところです。・・・聞こえましたでしょうか。
私の耳にははっきりと「るしふぁーはえらい」と聞こえます!
ルシファ−というのはとても悪い悪魔で、サタンと同じです。
このことからも、ダイナマイツが悪魔崇拝集団であり、サタンと血の契約を交わしていることは明らかなのです。
彼らのCDを聴くだけでも、その毒電波であなたの脳は確実に腐ってしまいます。
絶対に彼らのCDを聴かないようにしましょう。

あなたの魂の清浄を保つために、ダイナマイツのライブには絶対に行かないようにしましょう!


前述、「プロフィールを作ろう」の項でも参考にしたパンクバンド「ダイナマイツ」のネガティブキャンペーンチラシです。
ダイナマイツのマネージャーは当時のパンクバンドの中でも最もマネージメント能力が高いと評された人物で、ダイナマイツの成功はほとんど彼の功績といわれるほどですが、このチラシの完成度も非常に高いものとなっています。

まず留意したいのは、このネガティブキャンペーンチラシの論調が、全体を通して非常にヒステリックなものであることです。
冷静に読み通せば、このチラシを書いた人の方が非難されるべき内容なのですが、前述の通り善良な一般市民は人の悪口を言うことが大好きですから、多くの人はこのチラシを鵜呑みにしてダイナマイツに悪印象を持つことになります。

ですが、ここで面白いのは人間集団というものは必ずマジョリティに反撥する人間が出てくるということです。
つまり、一様に皆がダイナマイツの悪口を言っていれば、それに対して逆に無批判的にダイナマイツを擁護する意見が必ず出てくるのです。
そのときにこの文章がヒステリックであることが大きな意味を持ちます。
ダイナマイツを擁護する人たちは、このテキストに対しいくらでも非を唱える箇所を見出し、逆に糾弾することができるのです。

実際のところ、このチラシは書いている人の方が間違っており、冷静に読み解けばそんなことは明らかなのですから、ダイナマイツを擁護する人たちは自分たちだけが「本当のことを分かっている」という優越感を持つことになります。
そのような状況にありながらも、世間のマジョリティはやはりダイナマイツと彼ら擁護者に対し鋭い矛先を向けてきますから、擁護者の人たちは仲間同士で寄り添い合うしかありません。
ここで“ファン同士の仲間意識”が生まれることになるのです。

さらに、中にはこのチラシを鵜呑みにして「オレも悪魔崇拝してー」という理由から、ダイナマイツのファンになろうとするアウトサイダーも現れるでしょう。
そんな人たちがファン組織の内部で暴れることにより、外部の人たちは「やっぱりダイナマイツは恐ろしいバンドだ」という印象を頑なにし、ここに素晴らしいパンク好循環が生まれるのです。
ダイナマイツの宣伝戦略は、これまでで最も成功した一例といえるでしょう。

さすがに、ここまで見事なマネージメントを行うことは難しいと思います。
マネージャーの能力のみならず、そのときの時世や運にも左右されるところが大きいからです。
ですが、マネージャーたるもの常にこれらのことに注意を払い、時には冷徹にバンドメンバーですら駒として利用しなければなりません。
メンバーからの反撥もあるでしょうが、しかし、これで彼らは立派なパンクバンドになれるのですから、長期的視点で見れば、あなたは感謝こそされ非難されることはないでしょう。

・ライブのマナーを学ぼう

さて、無事に宣伝活動も終え、あなたはとうとうライブ当日を迎えます。
あとはライブをするだけ・・・と思いがちですが、実際はライブ以外にもいろいろと気をつけるべきマナーがあるのです。
それらのマナーを学ぶことは、パンクロッカーであるあなたには面倒くさく感じられるかもしれませんが、しかし、これらのマナーをつつがなくこなしていかなければ、周りの人たちからファッションパンクと蔑まれてしまいます。
その意味で、パンクロッカーにとっても、マナーはとても大切なものなのです。

まず、第一に気をつけて欲しいのは、必ず指定された時間通りにライブハウスへ行かないことです。
言うまでもない事ですが、指定された時間通りにライブハウスへ行くような自己管理のできている人はパンクロッカーではありません。
そんな人はファッションパンクとして軽蔑されます。
また、ただ軽蔑されるだけではありません。
あなたたちを受け入れたライブハウスは、当然、あなたたちにパンクロッカーとしての行動を期待しているはずです。
つまり、ライブハウス側が提起してきた集合時間は、実際の集合時間より数時間早いものであり、あなたたちが遅刻してくることを見越して設定された時間なのです。
あなたたちパンクロッカーが集合時間に遅れるのは、論理的に考えて当然のことだからです。
そんな中、あなたたちが迂闊にもひょっこり時間通りに集まったらどうでしょう。
ライブハウス側も多いに迷惑するに決まっています。
「パンクロッカーのクセに時間通りに来てんじゃねえよ」と舌打ちされることでしょう。
あなたたちが蔑まれるだけではなく、店側に迷惑をかけることにもなるのです。
時間通りに集合することは絶対に避けるようにしましょう。

会場に入ったら、まずライブハウスのスタッフ、それと一緒にライブをする人たちに挨拶をしましょう(なお、一緒にライブをする人たちを専門用語で『対バン』と呼びます)。
言うまでもないことですが、生粋のパンクロッカーであるあなたたちが選び、あなたたちを受け入れたライブハウスですから、そのスタッフも対バンも、みなパンクロッカーであると認識するべきです。
ですから、大きな声で明朗快濶に「おはようございまーす」などと挨拶するのは絶対に避けましょう。
明るく元気だという印象を持たれると、すぐにファッションパンクだと決めつけられてしまいます。

ですから、あなたたちはパンクロッカーとして正しい挨拶を学び、実践しなければなりません。
そして、パンクロッカーにとって正しい挨拶とは、言うまでもなくこれです。

「てめえら、ファッションパンクだ」

相手がいかに立派なパンクロッカーであろうと、この挨拶は絶対です。
自分たちだけがパンクであり、他者は全てファッションパンクであるという自覚が、パンクロッカーにとっては何よりも大切なのです。

「ああ?クソが、てめえらこそファッションパンクだろうが」

相手がこう返してきたならば、あなたたちの間でパンクロッカーとして正常なコミュニケーションが交わされたということです。

これは例え相手がセックス・ピストルズであろうと違えてはいけません。
セックス・ピストルズがパンクであることをあなたは重々承知しているとは思いますが、心を鬼にしてファッションパンク呼ばわりしましょう。
これが成句なのですから、仕方がありません。
パンクの伝統に沿い、パンクの掟を遵守することが、偉大なる先人であるセックス・ピストルズをむしろ喜ばせることになるのだと、胸に刻んでおいてください。

一般的なライブハウスには、出演者が荷物を置いたり、メイクをしたりする、いわゆる「楽屋」と呼ばれる小スペースがあります。
このスペースはほとんどのライブハウスでは大変小さなものであり、この狭い空間を共有するために、明文化はされていませんが、一般的なマナーが存在しています。
そのマナーとは「直前の出演者が優先的に使用する」というものです。
次が出番のバンドが十分に楽屋を使えるよう、気を遣うのが一般的なマナーなのです。

しかし、もちろんパンクロッカーの間では勝手が違います。
そのような譲り合い精神を発揮していてはファッションパンクと馬鹿にされてしまいます。
パンクロッカーにあるのは、ゼロかイチか、そのいずれかです。
半分だけ使うだの、直前だけ使うだの、そんなシュレディンガーのような曖昧さはパンクロッカーには似合いません。
パンクロッカーにおいて、楽屋とは、出演バンドの中で最もパンクなバンドが占有して使うものなのです。
そのためには、楽屋に入るや否や自分たちの荷物を大きく広げ、「ここは自分たちの縄張りである」ということを強くアピールしましょう(これをパンク専門用語で「マーキング」と言います)。
自分たちの縄張りと、他者の縄張りの間で緊張が走る時もあるでしょう。
時には殴り合いにまで及ぶかもしれません。
しかし、そういった切磋琢磨を通し、パンクロッカーたちはお互いを磨いていくのです。

・用意するものはなに?

今度は少し視点を変えて、ライブに必要な物を見ていきましょう。
言うまでもないことですが、各種衣装や楽器は必須ですね。
衣装に関してはSTEP6を参照してください。

ただし、気をつけて欲しいのは、ベーシストは必ず自分でベースを持って来てはいけない、ということです。
ベースというのは楽器の中でも最も重量があり、最もかさばるものです。
ベースを運ぶという行為は、十字架を背負いゴルゴダの丘へ登ることに比されるほど、激しく過酷なものなのです。
そのような大変な仕事を、ベーシストであるあなたがしていいはずがありません。
ベースを家から持ってくる姿を見られたら、あなたは努力家の烙印を押され、ファッションパンクだと蔑まれるでしょう。
ベースは事前にマネージャーに預け、彼に持ってきてもらうべきです。

また、ライブでは、ライブ中に出演者が喉を潤すためにドリンクを用意します(これを専門用語で『ステージドリンク』といいます)。
このステージドリンクですが、一般的なバンドでは烏龍茶やミネラルウォーターなど、喉に優しいものが選ばれます。
ですが、パンクロッカーであるあなたの喉を潤すものは、もちろん酒以外にはありえません。
これまで何度も繰り返してきたことですが、パンクロックにおいては演奏は下手なら下手なほど良いのです。
酒に酔っていれば、声は出ないし、手元は狂うし、途中で眠たくなるし、良いこと尽くめです。
ステージドリンクは出来るだけ度の強いアルコール飲料を用意することにしましょう。
また、大変危険であり、推奨できるものではありませんが、メチルアルコールをステージドリンクにすることはものすごくパンクです。

他に用意するものとしては曲順表というものがあります。
これはその名の通り、当日行う曲の順番を紙などに書き出し、出演者の足元に張っておくものです。
この曲順表を参照しながらライブを行えば、曲順を間違えることなく、ライブが行えるというものです。
パンクバンドにおいても、マネージャーがこの曲順表を作成しておくのが一般的です。

しかし、当然の話ですが、何者にも縛られないパンクロッカーがこのような紙切れ一枚に縛られるわけがありません。
彼らは自分たちの感情の趣くままに曲を選び、演奏するのです。
曲順表などあっても、彼らは一瞥もくれないでしょう

では、なぜそのような無意味な物をわざわざ作成するのでしょうか。
それは曲順表を張り出すことにより、お客さんたちに
「オッ!こいつら曲順表に全然従ってないぞ。パンクだなあ」
と思わせるためです。
曲順表はパンクロックにおいては、演出として用いられるのです。

ライブの後に、お客さんにアンケートを書いてもらうのもアリですね。
もちろん、パンクロッカーたるものお客さんの意向を聞き、それに応えるようなライブをしてはいけませんから、あくまでデータ徴収と割り切るべきです。
そしてアンケートを作るのも、アンケート結果をチェックするのも、全てマネージャーだけで行うべきです。
人間とは弱い生き物ですから、お客さんから「ここが良かった」と言われれば、ついうっかりお客さんを喜ばすために、それに意識を向けてしまうからです。
お客さんの好感度を気にしているようでは、ファッションパンクです。
アンケート結果を知るのは、それにより今後のバンド経営戦略を練るべきマネージャーだけで十分です。

では、以下に実際に使われたパンクバンドのアンケート(回答済み)を挙げておきます。
これも前項同様「ダイナマイツ」のアンケートです。
回答したのは、ダイナマイツの熱狂的なファンであり、この回答を見ても分かるとおり、彼もかなりのパンクロッカーであるようです。




それと、意外に忘れがちですが、ライブでは往々にしてお金が必要です。
ライブハウスに課せられただけのノルマを達成できなかった時はもちろん、ドラムやアンプなど機材をレンタルするのにもお金はかかりますし、またライブ中に殴り壊したものについては弁償しなければならないでしょう。
オレたちはパンクだから一銭も払わねえぜ、という人もいるでしょうし、その気持ちも良く分かりますが、しかし、法治国家たる日本の警察機構をナメてはいけません。
支払うべきものはきちんと支払っておくのが無難でしょう。

ですが、メンバーたちは酒で酔いつぶれていたり、客とケンカして気を失っていたり、そもそもライブに来ていない可能性も十分ありえます。
ライブ後の彼らに支払能力など期待してはいけません。
ですから、マネージャーは数日前から必要になるだけのお金を彼らから取りたてておくべきです。
ライブハウスへの清算は全てマネージャーの仕事だからです。

・ライブ直前にすることは?

パンクバンドにとって、ライブ前に会場の様子や作りなどを確認することはとても大切な仕事です。
これは、実際にライブをするメンバー本人たちの問題ですから、さすがにこれをマネージャーに任せるわけにはいきません。
酒でも飲んで自分たちの出番まで寝ていたい気持ちは良く分かりますが、最低限、チェックすべきことだけはチェックしておきましょう。
本番になって、ステージ上であれがないこれがないと右往左往するのはとても格好悪いものです。

では、本番までにチェックしておきたいものとは何でしょう。
まず調べておきたいのはステージ上で固定されていないものです。
固定されていないものはすべからく凶器として用いることが可能だからです。
また、固定していないということは、ライブハウス側としても投げられたり振りまわされたりする前提で置いてあるということですから、心置きなく投げたり倒したりすることができます。
これらを把握しているかしていないかで、ライブ本番における破壊行為の迫力が全く違ってきます。
持ち上げようとしたものが持ち上がらなかったりしたら、とても格好悪いですよね。
これらのチェックは本当に簡単なことで、メンバー全員で取りかかれば1分2分で終わることですから、面倒くさがらずにしっかりチェックしましょう。

同様に、パンクロックはステージ上でも客席でも、激しく暴れるミュージックですから、会場内に尖った物や硬い物など、キケンな物がないかどうかはしっかりとチェックする必要があります。
それらを用いれば、流血をするのに大変なアドバンテージが得られるからです。
自前のナイフなどを用いるのであれば、これらのチェックは不必要と思うかもしれませんが、いつも同じアイテムではお客さんも飽きてしまいます。
その土地土地のアイテムが利用できれば、柔軟性の高いバンドだと評価されるでしょうし、地元の名産品などを使えば村おこしになるかもしれません。

また、ステージの高さもしっかりチェックしておきましょう。
パンクバンドたるもの、ライブ中にステージから飛び降り、お客さんに殴りかかることもしばしばだと思いますが、そのようなとき、ステージが案外高くてブルって飛び降りられなかったりしたら最悪です。
その途端、会場は一気にヒートダウン。
お客さんは、みな唾でも吐き捨てて帰ってしまうでしょう。
結局のところ、あなたはパンクロッカーなのですから、どれほどステージが高くても飛び降りなければならないのですが、そうはいっても事前にその高さを認識しているのといないのとでは心構えがまったく違ってきます。
事前にステージが高すぎることが分かっていれば、お客さんをクッション代わりにして飛び降りるということも可能だからです。
身体の大きなお客さんのほうが衝撃の吸収率が高いことも覚えておきましょう。
このように、事前にステージの高さを測っておくことはとても大切なことなのです。

最後に、余力があれば、会場内のゴミ箱の位置を把握しておくとモアベターです。
ライブ中に中身をブチ撒けたりすると演出効果が高いからです。
一般的なパンクのライブハウスでは、まずゴミ箱が空という状態が滅多にないことですが、その日に限って運悪くゴミ箱が空という場合もあります。
その時は、近くの肉屋などで廃棄部位をもらって入れておきましょう。
生臭さにより、会場内をさらに不快な空間にすることができますし、これをブチ撒けられたときの惨状は想像するだにパンクなものです。

・パフォーマンスはどんなかんじ?

ライブとは、CDの曲を生で演奏するだけのものでは決してありません。
CDを忠実に再現するだけの演奏ならば、ライブなどしなくとも、家でCDを聴いていれば良いのですから。
その場の空気、演奏者の振るまい、客の鼓動、ノリ、グルーヴ。
それら全てがあわさってライブなのです。
ですから、パンクロッカーたるあなたたちは、そのパフォーマンスにも十分気を配らなければなりません。

これまで何度も説明してきたことですが、もちろんパフォーマンスにもファッションパンクと間違えられない、正しいパンクパフォーマンスが様式として存在しています。
好き勝手に暴れれば良いというわけではありません。
第一、好き勝手に暴れてパンクパフォーマンスが成り立つのであれば、このようなマニュアルページなど始めから必要がないことになってしまいます。
きちんとした伝統と形式がある以上は、それに従って、正しいパンクパフォーマンスをするべきです。
それがファッションパンクと蔑まれない、唯一の方法なのですから。

では、具体的にどのようなパフォーマンスがパンクとして正しいパフォーマンスなのでしょうか。
その全てを列記することは不可能ですが、代表的な幾つかのパフォーマンスをここに例示しておきます。
パンク初心者のうちは、ここに例示している幾つかのパフォーマンスを忠実に再現し、それに慣れてきたら、他の様々なパンクパフォーマンスにチャンレンジすれば良いでしょう。
しかし、その際も必ず過去に様式化されたパフォーマンスを行うように注意しましょう。
自分たちで勝手に編み出したパフォーマンスは、得てしてファッションパンクになりがちだからです。

まず、パンクパフォーマンスの基本中の基本が、ステージで唾を吐くパフォーマンスです。
いえ、唾を吐くことはステージに限らず、日常生活のあらゆる場面で実践されるべきでしょう。
そのくらいパンクロッカーにとって、唾を吐くというパフォーマンスはベーシックなことなのです。

唾の吐き方、練習の仕方は、STEP4「個人練習をしよう」を参照頂くとして、実際のステージにおける唾の吐き方はどのようにすべきでしょうか。
何といっても、パンク初心者にいちばん多い初歩的なミスは、初めてのライブにテンパってしまい唾を吐くことをすっかり忘れてしまうということです。
日常生活から唾を吐く行為を怠っていなければ、ステージ上でもごく自然に唾を吐くことができますが、慣れないうちはなかなか上手くいきません。
ですから、初心者のうちはあらかじめ、一曲の間に何回唾を吐くか、どの方向に吐くか、などを細かく決めて、ノルマにしておくと良いでしょう。
人間というものは、学習できる環境さえ整えば、大概のことは実践できるようになるものです。
焦ってはいけません。誰でも始めは初心者です。
一歩一歩、確実にパンクロッカーへの階段を踏みしめていきま しょう。

次に押さえておきたいのは、痙攣パフォーマンスです。
セックス・ピストルズのボーカル、ジョニー・ロットンはステージでの痙攣したようなアクションが有名でした。
偉大なる先人に倣い、私たちもこのパフォーマンスを踏襲しなければなりません。

では、どうすれば痙攣することができるのでしょうか。
私たちの日常生活において最も身近な痙攣とは、足がつったり、こむら返りを起こしたりすることではないでしょうか。そして、それらの痙攣がスポーツ時に起こりやすいことも、経験上ご存知のことと思います。
じゃあ、簡単だ。ライブの前にテニスでもすればいいんだ。
パンク初心者のあなたはそう考えるかもしれません。
しかし、それは早計というしかありません。
いくらパンクパフォーマンスの為とはいえ、明るい太陽の下、楽しくテニスをしている姿を知り合いに見られでもしたら、そこであなたのパンク生命はお終いです。
ファッションパンクの汚名を着せられ、パンク界から永久追放となるでしょう。
過去、この過ちにより栄光のパンクロッカーの座から滑り落ちたバンドは枚挙に暇がありません。
くれぐれもこのような早まった真似はしないようにしてください。
そのような方法を用いらずとも、私たちには、もっと合理的でスマートな方法があるのですから。

その方法とは、カルシウムを不足させることです。
『あるある大辞典』によれば、体内のカルシウムが不足すると筋肉の収縮が妨げられ、足がつりやすくなるのです。
ただでさえ、ライブは激しい運動です。
日々日頃から、食生活に気を使ってカルシウムを退け、スポーツをせずに身体を鈍らせておけば、それだけで十分足はつり、痙攣を起こすことができます。
この方法は日々のたゆまぬ努力を必要としますが、しかし、ライブ当日にテニスをするようなリスキーな賭けではありません。あなたの心掛け次第なのです。
また、カルシウム不足を心掛ければ、痙攣パフォーマンスを行いやすくなるだけでなく、短気になり、ケンカや破壊行為が自然と多くなるというメリットもあります。

そして、パンクロッカーといえば、やはり破壊衝動とその帰結である暴力行為です。
手頃で簡単なものとしては、ステージや会場にある機材などを破壊するパフォーマンスがあります。
とりあえず何か壊しとけばパンクですので、思う存分壊しましょう。
事前に調べておいた固定されていない備品や機材を投げたり倒したりするのも良いですね。

しかし、ここで注意しておきたいのは、何か物を壊したらそれを弁償しなければならないということです。
パンクに破壊は付き物ですが、しかし、そのたびに壊した物を弁償していてはお金が持ちません。
となれば、やはり自分たちで壊すべき物を持参し、それを壊す方が経済的でしょう。
ですが、ドラムセットなどを毎回破壊するためだけに購入するのも大変な出費です。

そこで、私たちは発想の転換に迫られることになります。
破壊が消費的だからこそ経済的に逼迫するのですから、逆に、破壊することが生産的である行為を考え、それをパフォームすれば良いのです。
破壊することが生産的である行為にはどのようなものがあるでしょうか。
まず、すぐに思いつくのがスイカです。
これは壊さなければ食べることができず、破壊することで初めて食用として用を為します。
また、スイカの果肉はあたかも人の血や肉片のようであり、その意味からもパンクパフォーマンスに適した食材といえるでしょう。夏の風物詩としても楽しめます。
パンク初心者のみなさんは、まずは手始めにステージでスイカを割るパフォーマンスに挑戦してみると良いでしょう。

しかし、ここで注意して欲しいのは、いかに喉が乾いていようと、スイカを貪り食ってはいけないことです。
激しいライブでカロリーを消費し、汗をかき、煽り、歌い、喉が乾いているのは良く分かります。
ですが、激しくスイカに食らいつくことだけは避けてください。
何故なら、あまりに勢い良くスイカに食らいつくとドリフになってしまう怖れがあるからです。
ドリフターズはビートルズの前座を務めた程のバンドですから、彼らの真似などしてしまえば、当然ファッションパンクと見なされます。

最後に紹介するのは、あらゆるパンクパフォーマンスの中で最もショッキングであり、最も過激である、自分の身体を傷付けるパフォーマンスです。
セックス・ピストルズの伝説的ベーシスト、シド・ヴィシャスがライブ中に刃物やガラスの破片で自分の身体を傷付け血を流したことは余りに有名なエピソードです。
やはり、私たちは彼らの精神的伝統を継ぐためにも、この恐るべきパフォーマンスにも果敢に挑戦しなければならないでしょう。

しかしながら、言うまでもないことではありますが、これは本当に、非常に危険なパフォーマンスです。
ライブというのは誰であれ、多かれ少なかれ精神が昂ぶります。
うっかり手元が狂い、致命的な深手を負ってしまう可能性すらあります。
そのまま死んでしまえば、それは確かにすごくパンクではありますが、しかし、周りの人にも何かと迷惑ですし、第一そこでパンク活動が強制的に終了してしまうので、あまりお勧めはできません。
やはり何事もほどほどがいちばんです。

私のオススメとしては、ガマの油を持っていくことです。
仮に致命的な深手を負ったとしても、これがあればなんとかなります。
かの名刀正宗の切り傷でさえピタリと塞いでしまうことは、数々の大道芸人たちの証明するところです。

また、そもそも痛いのは嫌だ、という人もいるでしょう。
当然です。生物として当り前の反応です。
パンクロッカーとして、自分の身体を傷付けるパフォーマンスは避けて通れない道ではありますが、しかし、痛いものは痛い。やりたくない気持ちも良く分かります。
ですが、だからといって「オレはファッションパンクなのだろうか」と落ちこむのは早計です。ちょっと待ってください。

いいですか。
パンクに限らず何事もそうなのですが、本当に大事なことは、形ではなく中身なのです。
いかに形がしっかり整っていようとも、中身が伴っていなければ何の意味もないのです。
このケースでも全く同じことが言えるのではないでしょうか。
つまり、この場合、本当に重要なことは「刃物で身体を傷付けている」ことを”客にアピールする”ことです。
当り前ですよね。家で一人で身体に傷をつけていても、それでは単なる一人SMです。衆人の前で行うからこそ、パンク行為なのです。
結局のところ、大切なことは「刃物で身体を傷付ける」ことそれ自体ではなく、「刃物で身体を傷付けていると”客に思わせること”」なのです。

となれば、話は簡単です。
ナイフを捨て、赤マジックを手に取りましょう。
そして、あなたはライブ中、震える手で赤マジックを己の身体に突きたてるのです。
苦悶の表情を浮かべながらゆっくりと赤マジックを動かしましょう。
大丈夫です。お客さんの目には、あなたは刃物で自分の身体を傷をつけているようにしか見えません。
ステージは薄暗いし、お客さんはみんな酒に酔っ払ってるし、何より「パンクロッカーは刃物で己の身体を傷付けるものだ」という先入見があるので、意外と気づかれないものです。
ましてや、それが赤マジックなどと疑う人がいるわけありません。

この方法を用いれば、あなたは全く痛い思いも怖い思いもすることなく、自分の身体を刃物で傷付けるパフォーマンスが行えるのです。
大切なのは形ではなく、その中身なのだということをしっかりと認識してください。
形ばかりを追いかけていては、あなたはファッションパンクと蔑まれてしまうでしょう。

・ライブの後はどうするの?

無事にライブを終えたあなたたち。
ライブ中の激しい飲酒や数々の破壊行為・暴力行為により、ステージも会場も、もうメチャクチャになっていることでしょう。

さて。
一度、会場を落ち着いて見てみましょう。
どうでしょうか。会場はどの程度メチャメチャになっているでしょうか。
言うまでもないことですが、これはパンクのライブですから、破壊行為も暴力行為も激しければ激しいほどベターです。
つまり、ライブ終了後の会場の乱れ具合が、そのライブがどれほどパンクだったかを計る一つの目安となるのです。(だからこそ、どのパンクバンドも演奏そっちのけで物を投げたり、客を殴ったりするのですね)

では、あなたのライブはいかがでしたでしょうか。
より多くの物が破壊され、より多くの人がボコボコにされているほど高得点です。
特に、以下に挙げるような状況が一つでも当てはまれば、あなたのライブは大成功であったといえるでしょう。


コーナーポストで真っ白になって燃え尽きている。
ライブでの激闘の跡が伺えます。
相当激しい暴力行為を行ったのでしょう。
実にパンクです。70点。

一片の悔いもなく果てている
我が生涯に一片の悔いも無く果てるとは見上げたパンク魂です。75点。

湖に逆さで突き立てられている
一体彼に何があったのでしょうか。
余人の想像を許さぬ、恐るべきパンクです。
芸術点も加味して80点。

額に肉と書かれている
なんということでしょう。
パンクロッカーには倒れることすら許されないのでしょうか。
戦いに敗れ、傷つき倒れた者に加えられる更なる陵辱。
実にバイオレンス!100点です!!


いかがでしたでしょうか。
メンバー、ないし、お客さんが一人でも上述のような状態であれば、あなたのライブは極めてパンクなライブであったということです。
このような理想的な状況はなかなかお目に掛かれるものではありませんが、長くパンクを続けているバンドなら、一生のうち一度か二度は実現してみたいものですね。

さて。会場のチェックを終え、本日のライブを反省した後は、会場を片付けたり、ライブハウス店員に謝ったり、壊したものを弁償したりしなければなりません。
もちろん、それらは全てマネージャーの仕事です。
他のメンバーは泥酔して倒れているか、ライブ中にお客さんに殴られて気を失っているか、そもそも面倒くさくてライブに来ていないからです。
とにかく、それら後始末がまともにできるメンバーはマネージャーだけなのです。

あなたたちはパンクロッカーですから、物を壊したり人を殴ったり、会場をメチャクチャにしたりするのは当り前だと思うでしょうし、それゆえライブ中の蛮行を人に謝ったりするのは実にバカらしい行為であるように感じるかもしれません。
しかし、そのような気持ちも良く分かりますが、ここはグッと押さえて平身低頭、謝罪の言葉を舌の上で転がしましょう。
ライブハウス側もぷりぷり怒っているように見えますが、実際のところまったく怒ってはいません。
パンクバンドがライブで暴れるのは自然の摂理だからです。
にも関わらず両者がこのような形ばかりの行為を行うのは、それが決まりごとだからです。
面倒くさいとは思いますがそれはお互い様です。頑張りましょう。

そして、無事にメンバーを救い出した後は、メンバーをそこら辺に捨て置いて、マネージャーは自分のバンドのHPにカキコミです。
書くべき内容はもちろん分かっていますよね。
第三者を偽った今日のライブの悪口です。
詳しくはSTEP4「個人練習をしよう」のマネージャーの項を参考にして下さい。


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