さっそくリハーサルスタジオを借りましょう。
ちなみにスタジオというものは大きくリハーサルスタジオとレコーディングスタジオに分けることが出来ます。
リハーサルスタジオというのは、バンドの練習用のスタジオで全国津々浦々に大小様々なスタジオがあります。私たちが借りるのはこちらのスタジオですね。
一方、レコーディングスタジオというのは、その名の通りCDなどを作るための録音用スタジオです。
こちらについては、STEP10「レコーディングに挑戦だ」にて改めて触れることにしましょう。
さて、リハーサルスタジオの選び方ですが、まずは何といってもメンバー全員の家から近いところにあるスタジオを選びましょう。
メンバーは何せパンクロッカーです。
誰にも縛られることなく、気の赴くままに自由気ままに生きている人間たちです。
スタジオが家から遠いというだけで、サボタージュするには十分な理由です。
私の知り合いのパンクバンドではベースが「家から徒歩10分も掛かる」という理由でスタジオに一度も参加せず、結局ライブも出来ないまま解散した経緯があります。
これはあまりにも極端な例ですが、このように家から遠いというだけでパンクバンドは解散の萌芽を抱えてしまうことを意識してください。
どうしても全員の家から中間距離にある場所にスタジオが取れない場合は、ボーカルとベースの家に近い場所を優先してください。
統計的に見て、パンクバンドで最も心が広く気が長いのはギターとドラムだからです。
メンバー全員の家から近いスタジオが幾つか候補に上がったでしょうか。
では、次にスタジオの設備・機材を比べてみましょう。
パンクバンドにとって最適なスタジオとは、以下のような条件を備えたスタジオです。
- 安い
- 地下にあって、ジメジメしている。かび臭い
- スタッフが無愛想
- シンバルが割れている
- 飲酒・喫煙可
- 鏡が張ってある
- 演奏が録音できる
まず、安いというのは絶対条件です。
何度も繰り返してきましたが、パンクとはもともと労働者階級の怒りの声、つまりプロレタリアートの音楽だからです。
経済的に貧困であるに越したことはありません。
地下にある、というのも重要なポイントです。
ジメジメしてかび臭い場所であればモアベターです。
最初は何事も形から入るべきです。
暗くてジメジメしたかび臭い場所で不健康(=パンク)のイメージを膨らませましょう。
また、地下には「世間の鼻つまみ者(=パンク)」というイメージも付随するため、一石二鳥です。
その意味では、スタッフも無愛想な方が良いですよね。
妙にフレンドリーなスタッフでは、せっかくジメジメした暗い場所にあっても、気分が明るく前向きになってしまいます。
こんなことではパンクはできません。
機材のメンテナンスも可能な限り劣悪な方が望ましいです。
シンバルが割れていたり、アンプから音が出なかったり、マイクがひしゃげていたりすると、パンクな雰囲気が出て良いですね。
実際のところ、それら機材がボロボロなのは先人のパンクロッカーたちが暴れた結果なのです。
ボロボロの機材から先輩パンクスの情熱を感じ取れれば、練習にも熱が入るというものです。
また、アンプから音が出なかった場合は、店のスタッフとケンカをするチャンスです。
「おい、音がでねえじゃねえか」
「それはお前らの扱い方が悪いからだろ、ボケ」
「なんだとこの野郎、こっちはカネ払ってんだよ!」
ここまでは既に成句として成立しているやり取りです。
パンクロッカー向けのスタジオであれば、あなたたちの機微を汲んで、速やかに殴り合いに移行してくれることでしょう。
飲酒・喫煙が出来ることは、パンクロッカーにとって、最低条件といっても過言ではありません。
パンクロッカーにとって、飲酒・喫煙は呼吸と同じような意味合いを持ちます。
2時間のスタジオとはいえ、耐えられるはずがありませんし、耐えられるようではファッションパンクです。
「鏡が張ってある」「演奏が録音できる」というのは、パンクバンドに関わらず、全てのバンドにとってあるに越したことはありません。
鏡が張ってあれば、自分たちのパフォーマンスを確認できます。
特にベースの人は自分の身体を刃物で傷付ける練習などをするときに、鏡が必須となってきます。
演奏が録音できる環境があることも大切です。
スタジオで自分たちの演奏を録音し、それをスタジオ後のミーティングで検討するためです。
上記のような点に注意して、理想的なリハーサルスタジオを探してください。
なお、スタジオは総じて昼間が安く夜間が高くなっていますので、出来る限り昼間に入るようにしましょう。
とはいえ、開始時間が早すぎるとパンクロッカーは皆寝過ごしてしまいます。
昼3時以降にするべきでしょう。
ちなみに、スタジオを予約するのはマネージャーの仕事です。
他のメンバーは基本的に「練習をしよう」という意志を見せないように気を配りましょう。
嫌がるメンバーをマネージャーが無理矢理練習させている、というポーズを(外見だけでも)取り繕うべきです。
嬉々としてスタジオへ向かっているところを見られてしまうと、週刊誌に「驚愕!×××(個人名)はファッションパンクだった!」とスッパぬかれてしまいます。
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