STEP3 「メンバーを集めよう」



楽器を手に入れたなら、バンドを組むべく、さっそくメンバーを集めましょう。
自分の思う通りのメンバーはなかなか集まらないものです。
メンバー募集は根気強く行いましょう。
STEP3では、メンバー募集の一般的方法から、パンクバンドにふさわしい人材の見分け方までアドバイスします。

・メンバー募集をしよう

メンバー募集には、何種類かの方法があります。(なお、メンバー募集のことを専門用語で『メン募』といいます)
最も簡単で手っ取り早いのは、周りのパンクな友人たちとバンドを組むことです。
しかし、よっぽどの幸運に恵まれてでもいない限り、あなたの周りに優秀なパンクロッカーが2人以上いる可能性は薄いでしょう。
やはり一般的方法として、不特定多数の大勢に向かってバンドメンバーを募集する必要があります。

不特定多数の人間に向かってメンバー募集をする方法は、主に次のようなものがあります。

  1. 楽器店、スタジオなどに張り紙をだす
  2. ネットのメン募サイトを利用する
  3. 「BANDやろうぜ」など雑誌に投稿する
これらの手段の中で、最も簡単に実行できるのが2の「ネットのメン募を利用する」です。
自宅にいながら、気軽に募集や応募ができるメン募サイトを利用しない手はないでしょう。
1の「楽器店やスタジオに貼り紙をだす」を実行する場合は、1店だけでは効果が薄いと思われますので、複数の店に貼り出すことをオススメします。

なお、メン募には大きく分けて、「加入希望」と「メンバー募集」があります。
前者は投稿者が1人、もしくは少数の場合で、既にある程度形ができているバンドに加入を望むものです。この場合、投稿者の発言権は相対的に弱いものとなりますが、投稿者が単数(少数)であるため、比較的加入しやすい傾向にあります。
ともかく、早くバンドを始めたいのならば、「加入希望」とすべきでしょう。
一方、後者は、投稿者が数人、もしくは1人で、何人かのメンバーを集めてバンドを形にしようというものです。この場合は主な発言権が投稿者側にあります。
しかし、投稿者が1人の場合、なかなかメンバーが集まってきてくれません。
投稿者が1人では1人の応募があったとしても、まだ3人の応募を待たなければならず、なかなかバンドが始められないからです。
1人で「メンバー募集(自分以外の全パート募集)」をする場合は、バンド結成までかなりの長期戦になることを覚悟しなければなりません。

しかし、あなたはおそらくベーシストとして、パンクバンドを結成したいと考えているはずです。
この場合は、「加入希望」としても決して声が掛かることはありません。
なぜなら、パンクボーカル・パンクギター・パンクドラム・マネージャーが既に揃っていて、パンクベースのみ欠けているパンクバンドなど、常識的に考えてありえないからです。
前述の通り、パンクバンドにおいてベースは圧倒的に人気のあるポジションです。
誰もがこぞってベースをやりたがります。
最後までベースの席だけが空いているなど、奇跡でも起こらなければありえません。
ですから、長期戦になることは覚悟し、あなた一人で「メンバー募集(ベース以外全パート募集)」するしかないのです。
メンバーが揃うまでかなりの時間を要することになりますが、その代わり、バンドが組めた際にはあなたに大きな発言権が与えられます。
自分の理想とするパンクバンドを作るためにも、メンバー募集をすることをオススメします。

・どんなメンバーが必要なの?

集めるべきは、もちろんパンクバンドを組むのに必要なパートのメンバーです。
あなたがとんでもない天邪鬼でなく、ごく普通の感性を持った人間であるならば、あなたはシド・ヴィシャスになりたい、つまりベーシストになりたい、と思っていることでしょう。
となれば、集めるべきメンバーは、ボーカル・ギター・ドラム・マネージャーということになります。

しかし、言うは易く行うは難しとはまさにこのこと。
他のジャンルならいざ知らず、パンクにおいて、ギターやドラムを探すというのは本当に難しいことなのです。
言うまでもないことですが、パンクロッカーになりたい、と考える人の多くは、すなわち「シド・ヴィシャスになりたい」と考えるからです。
つまり、世の中にはパンクベーシストが多すぎるのです。
そして、パンクギターになりたい、パンクドラマーになりたい、という奇特な人間はほとんどいないのです。

あなたはそんな極少数のパンクギター、パンクドラマーをがっちりと掴まえなければならないのです。
多すぎる需要、少なすぎる供給、あなたがギターやドラマーを得るためには、あなたが作ろうとするパンクバンド、ならびにあなた自身にどれほどの魅力があるのか、しっかりとアピールしなければなりません。
そのアピールの方法については後に詳しく触れます。

ギター、ドラムを得ることが難しいことは納得していただけたと思います(実際、あなたの周りにパンクギタリストなんて滅多にいませんよね)。
その一方、ボーカルに関してはギターやドラムほど悲観的になる必要はありません。
ボーカルはベースほどではありませんが、そこそこ人気のあるパートです。
こちらは比較的簡単に勧誘することができるでしょう。

マネージャーは、極めて特殊なパートです。
マネージャーは決して数は多くありませんが、その多くがフリー(バンドに所属していない)です。
なぜなら彼らは三国時代でいうところの軍師であり、諸葛孔明のような人たちだからです。
彼らは自分たちが本当に認めたバンドでなければ、その力を貸そうとはしないでしょう。
ですから、多くのマネージャー希望はいまでもフリーなのです。

マネージャーはギターやドラムと同じくらい得がたいパートではありますが、上記のように多くがフリーです。
あなたがしっかりとしたパンク自己アピールを行い、自分たちのパンク魂を伝えることができればフリーのマネージャーはあなたたちに力を貸してくれるでしょう。
運ではなく、実力のみで勝負できるという点では、マネージャーはギターやドラムより得やすいかもしれません。

・パンクに適した人材は?

パンクに適した人材とはどのような人のことを指すのでしょうか。
抽象的に言うならば「生活からパンクな人」ですね。
しかし、これは抽象的に言うのは簡単なのですが、では、具体的にどういう人間か?といわれれば、極めて答えに窮する問題です。

個別的事例を挙げていけばキリがないのですが、やはり以下のような人間がパンクに相応しいといえるでしょう。
  • 飲酒、喫煙をたしなむ
  • 何者にも媚びない
  • 感情に従って生きている
  • なんとなくこわい
  • 反骨精神に溢れる
  • 理屈が通じない
  • 小さいことにこだわらない
  • マジョリティに反抗する
  • 打算がない
  • 刹那に生きる
  • 身体が細い
  • 筋肉がないetc......
一言でいえば、集団行動に適さない不健康な人、ということです。
また、破壊的なイメージを醸しているかどうかも重要です。

そして、付随的なことではありますが、音楽的なことに関する興味や認識もパンクロックをする上で重大なポイントとなってきます。
パンクロックは、他の音楽ジャンルと大きく違い「ヘタであること」が何よりも重視されます。
それも、ただヘタであれば良いというわけではありません。
「努力の感じられないヘタさ」でなければならないのです。
ですから、音楽に対する情熱や、繊細さを持つ人間はパンクに不向きといえるでしょう。
リズム?コード?知らねえな、オレは弾きたいように弾くぜ。
このような人間がパンクにとって最適な人材です。
バンドという共同作業の場においてすら他メンバーと足並みを揃えようとしない、そのような姿勢がパンクロッカーには求められるのです。

しかし、それはパンクロッカーに対する理想論です。
実際は、ある程度の協調性がなければパンクといえどバンドにはなりません。
上記の「理想的パンクロッカー」はバンドに一人、つまりベーシストがそうであれば十分です。
そして、あなたがそのベーシストであるはずですから、あなたは様々な立ち位置を持った、各パートに相応しい人物を集めれば良いのです。
ですから、ここからは各パートごとに適したパンク人材について解説いたします。

まず、ボーカルですが、彼はバンドではベーシストに次ぐ「理想的」パンクロッカーであることが要求されます。
ベーシストと並び、フロントマンなのですから当然ですね。
扇動的なパフォーマンスを行い、ベーシストと一緒に客を殴る、そういった刹那的・破壊的な性格が求められます。
しかし、その一方でボーカルには打算的、かつ計算高い知性も求められます。
彼の破壊的行動はベーシストと同じく、打算なき行動ではありますが、その心中のどこか一辺では、自分の行う破壊的パフォーマンスの持つ意味合いや、影響力を考えて行動しているのです。
ボーカルはマネージャーと同じく、バンドについて総括的なヴィジョンを持ち、しかしながらマネージャーとは様々な点で意見が相違し、反目し合う関係にあるのがベストでしょう。
また、ライブでも私生活でも激しくパンク的であるベーシストの心身の健康を気遣う優しさも必要となります。
ボーカルは優秀かつ仲間思いの現場指揮官といったところでしょうか。
加えていうならば、ベースとボーカルは私生活でも友人であることが望ましいですね。

一方、マネージャーは冷徹で傲慢、全てを自分の計算通りに動かそうとするとんでもないエゴイスト。
バンドのことなど自分の金儲けの道具としか思っていない、そういった人間が最適です。
ボーカルのように、バンドメンバーに対する温かい情などは不要です。
クールに、ただ、バンドを持ち上げるためだけに行動するのがマネージャーというものです。

ギターとドラムには、あまり個性は必要ありません。
ベースやボーカルの突発的な行動に付いて来れるだけのパンク魂と、マネージャーの無理難題に従う従順性があればOKです。
ドラムはそれほどでもありませんが、ギターに関して言えば、若干音楽的な情熱を持っていた方が良いかもしれません。
詳しくは後述しますが、ギターは唯一曲の展開を把握しなければならないパートだからです。
曲の展開を覚える程度の音楽に対する積極的姿勢は欲しいところです。

もし、あなたがベーシストでないならば、そして将来的にはオリジナル曲を作りたいと思っているならば、最初のベーシストには「理想的なパンクロッカー」よりも、普通にベースが弾けて作曲もできる人間を入れると良いでしょう。
彼には、その優れた作曲能力を駆使してもらい、早めにオリジナル曲を数曲作ってもらいましょう。
そして、それなりにオリジナル曲が貯まってきたら、そのベーシストをクビにしましょう。
そのあと、「理想的なパンクロッカー」であるベーシストを新たにメンバーに加えるのです。
ベースをクビにする理由は何でも良いですが、「ビートルズが好きだから」という理由でクビにできれば最高です。
本人がなかなか「ビートルズが好き」と言わない場合は、誘導尋問などを使えば良いでしょう。
「テクノとビートルズ、あえていうならどっちが好き?」などと聞けば、さすがに「ビートルズが好き」と答えざるを得ないでしょう。
なお、ベースをクビにしても感情的に別れてはいけません。
彼には全くベースの弾けない「理想的な」ベーシストの代わりに、レコーディングでベースを弾いてもらわなければならないからです。

・どんなビラを書けばいいの?

前述の通り、圧倒的に少ないパンクギター、パンクドラム、マネージャーを募集するには、募集ビラにしろ、メン募サイトへの書き込みにしろ、とにかく自分のパンクに対する熱い情熱をアピールし、自分がファッションパンクではない、本物のパンクバンドを作ろうとしていることを強調しなければなりません。
それには、募集ビラに書く文句の内容が非常に重要になってきます。
この項では、募集ビラに書くときの最低限のルールや、メンバーの集まりやすい文句について解説を加えていきます。

まず、明記しておきたいのが「プロ志向」の4文字です。
絶対にプロになる、音楽でカネを稼ぐ、という姿勢を明らかにしましょう。
なぜなら、パンクバンドを始めようという多くの人は、純粋に金目当てであることがほどんどだからです。
特にマネージャーがバンドに力を貸す理由は金以外にはありえません。
プロ志向(=カネを稼ぐ)という姿勢を明記しないと、ボーカル、ギター、ドラムは運良く集まったとしてもマネージャーを得ることは決してできません。
「セックス・ピストルズのコピーバンドをやりたいベーシストだ、クソッタレー!!ベース以外の全パート募集だぜ!ピストルズのコピーで絶対メジャーに行くぜ!」
と、このように「メジャーに行く」「音楽で食っていく」など、「プロ志向」と同義の表現を必ず挿入してください。
もちろん、そのまま「当方、プロ志向」「プロ志向でやっていける人のみ」など書いても構いません。

それからジャンルを明記することも大切です。
自分たちは「パンクロックをやりたい」ということをしっかりとアピールしましょう。
パンクロックがやりたいことが伝わらない場合、とてもテクニカルなギタリストや、ツーバスバリバリのドラマーが来たりしかねません。

「とにかく熱い奴募集」「ホンモノ志向」なども添えておきたい文句です。
パンクロッカーであるからには、熱く燃えたぎるパンク魂が絶対に必要ですし、ホンモノ志向もいわんとする意味は良く分かりませんが、とにかくピストルズみたいなパンクバンドが作りたい!という意志を感じます。

また「バンド中心で活動する気が無いヤツ」とかも、必要条件に加えておきましょう。
パンクロッカーとは、日常のパンク生活の延長上にライブでのパンク行為が現出するのが理想的です。
「バンド中心で活動する」ということは「意識的にパンクであろうとする」という意味であり、舞台の上だけのパンクというのは、つまるところファッションパンクです。
バンド中心で活動する気が無い、スタジオもライブも平気ですっぽかす、そのくらいの勢いがパンクロッカーには欲しいところです。
マネージャーも、これらの言葉を見て「オッ!こいつら、音楽やる気ないな・・・いけるッ!」と判断するものです。
「いつも自分中心で活動している人」を募集しても良いですね。

「楽器初心者のみ」「向上心のない人」も書いたほうが良いかもしれません。
パンクロックに必要なのは、何よりも技術の稚拙さです。
楽器上級者や、向上心旺盛な人は、得てして楽器を上手に弾きがちです。
また、一度テクニックを使う喜びを覚えてしまった人は、「あえてヘタに弾く」パンク的演奏にプライドが耐えられない場合があります。
やはり、最初から楽器が弾けず、努力をする気が無い人を探すのがベストでしょう。
なお、単に「初心者のみ」と書いてはいけません。
これでは「パンク上級者」の人を逃す怖れがあるからです。

あと、一般的なメン募でしばしば見かける、自分の好きなバンドを羅列する愚にもつかない行為ですが、あんなものはパンクバンドには必要ありません。
なぜなら、パンクロッカーが好きなバンドといえば、唯一「セックス・ピストルズ」だけであり、そんなことは改めて言うまでもなく、誰もが知っていることだからです。
もしも間違って「グリーン・デイ」などを書いてしまうと、「なんだこいつ、ファッションパンクかよ」とそれだけで呆れられてしまいます。
このような行為は基本的には百害あって一利ないものですが、どうしてもセックス・ピストルズが好きだということを強調したいなら(まったくの徒労ですが)「好きなバンド:セックス・ピストルズ、セックス・ピストルズ、セックス・ピストルズ、セックス・ピストルズ......×n」とピストルズの名前を連記すれば良いでしょう。

では、次からは、実際にあったメンバー募集の文句を例に取り、具体的にどのような文句がパンクバンドのメン募に適しているのか、例証していきましょう。

CASE1.本当のパンクロッカーを強調する場合

「とにかくパンクを愛していて、熱いビートが出せる奴!ヤワなやつには用はねえ!パンクを分かってねえのにパンク気取ってる奴らが多すぎっからよ、俺達でそいつらに本当のパンクって奴を見せてやろうぜ!」

かなり高ポイントのメン募文句ですね。
「ビートが出せる」という表現が「高度な演奏技術が必要」という誤解を招く怖れがありますが、その他の点では文句の付けようがありません。
「パンクを分かってねえのにパンク気取ってる奴らが多すぎる」という表現は、つまり「オレたちはファッションパンクじゃねえ」ということです。
何よりも大切なのは、自分たちがファッションパンクではないことをアピールすることですから、その点に的を絞ったこの文句はかなり要点を押さえたものといえます。

「本気で、マジで、本当に本物のパンクやろうぜ!」

これも「自分たちはファッションパンクではない」ことを強調する、シンプルながらも、よい文句です。
「本気で、マジで」「本当に本物の」と、トートロジーを駆使することで、自分たちが如何に本物のパンクロッカーであるか、アピールすることに成功しています。

CASE2.性格重視の場合

「早くライブやりたいのでとっとと電話ください。」

メンバー募集のビラに書く文句次第で、集めたいメンバーの性格も選べるという文句の好例がこれです。
「とっとと」という高圧的な表現のあと「ください」とへりくだることで、命令的だけど言葉遣いは正しい人に弱いメンバーを集めることができます。
これはマネージャーの言いなりになるべき、パンクギター、パンクドラマーを集めるときに使える文句です。
ただし、パンクベーシストであるあなたが書く場合は「ください」などとへりくだってはいけません。ライブがしたい、と音楽に対する情熱をストレートに現すことも避けたいところです。
「早くライブがしたい、という気がしなくもないと、そこはかともなく感じている今日この頃だぜ、クソッタレー!!とっとと電話しろや、ボケナスが!」
などがよろしいでしょう。
前半をまわりくどく書くことで、早くライブがしたいという感情を曖昧にしています。

「気長に待つ。なんかめんどくさい人とかもいいと思います。」

「気長に待つ」という表現が、性急さを好むパンクと相容れないところですが、後半の「めんどくさい人とかもいい」というのは良いですね。
「めんどくさい」という感情はパンクロッカーにとって重要なファクターです。
めんどうくさいから楽器も練習しない、めんどうくさいからスタジオもいかない、パンクロッカーに大切なことの多くは「めんどくさい」という感情に依るからです。

CASE3.感情型

「難しいことはわかんねえが、激しく、速く、かっこいいやつをやりてぇ。顔だとか、センスとか、うまいとか下手だとか、そんなの関係ねえから連絡くれ。」

とにかく感情的な文句を書くことで、何はともあれ、自分のパンク魂をアピールするときに有効なのが、この感情型です。
上記の例では、結局どんな人材を募集しているのかさっぱり分かりませんが、とにかく、激しく、速く、かっこいいやつをやりたいことは伝わってきます。
やっぱり、何が言いたいのか良く分かりませんが、とりあえずこの文句を書いた人がパンクであることは間違いないでしょう。
このように、とりあえず書いた本人がパンクロッカーであることだけは理解できるのが、感情型の特色です。
読み手の感情に直接訴えかけるこの感情型は、お互いがパンクロッカーでなければ通じ合うことができませんから、自然とパンクロッカーのみを募集できるというメリットがあります。

「ピンと来たやつおとといきやがれ!」

これも感情型の好例です。
ピンと来た場合、結局何をすればいいのか。
おととい来るとはどういうことなのか。
何もかもが謎ですが、とにかくこれを書いた人がパンクであることだけは間違いありません。

上記のような理想的なメン募文句を参考にし、あなただけのオリジナリティ溢れるパンク文句を考えてください。
メンバー募集は既にパンクの一部です。
作詞をするくらいの気持ちで、パンク文句を作文すると良いでしょう。

・実際に会ってみよう

さて、メンバー募集で何人かから連絡が来たならば、実際に会ってみましょう。
あなたの目で、相手が立派なパンクロッカーかどうかを見極めるのです。
しかし、初心者の場合は往々にして、ここで失敗を犯してしまいがちです。
間違えて普通のロック少年やファッションパンク野郎なんかをメンバーにしてしまっては、バンドの崩壊は目に見えています。
ここでは、メンバー候補と実際に会ったとき、その人がちゃんとしたパンクロッカーかどうかを見分けるコツについて触れていきます。

見極めのポイントを概括するならば、メンバー候補と会う場合に注意しなければならないのは、その人の見た目、発せられる雰囲気、態度、所作、言葉遣い、などです。

第1のチェックポイントは、すぐに分かる相手の見た目です。
ゴテゴテすぎるほどのパンクファッションに身を包んでいればOKです。
この時点で、その人が単なるロック少年か、それともパンクロッカーか、大きく線引きをすることができます。
しかし、身を包んでいるものがパンクファッションであっても、油断はできません。
大切なのはここからです。
何故なら、その人は「カッコだけ」のファッションパンクである可能性が高いからです。

まずは軽い挨拶です。
しかし、軽い挨拶といっても疎かにしてはなりません。
最初の一声は、お互いが相手のパンクレベルを計る、第2のチェックポイントだからです。

とりあえずは、こちらから挨拶することはせず、高圧的に相手を睨みつけましょう。
相手から「あ、はじめまして、僕、×××というものなんですけど、メン募を見て〜」と言ってきたならば、相手は間違い無くファッションパンクです。
唾でも吐き捨てて、とっとと帰りましょう。時間の無駄です。
話しこめば心の奥底に潜むパンク魂を発見できるかもしれない、などと考えるのは間違いです。
そんな惰弱な考えは捨ててください。

相手が本物のパンクロッカーの場合、こちらが何もいわずに睨みつけていれば、相手も何もいわず、睨み返してくるだけでしょう。
十分な時間睨み合ったならば、いよいよ挨拶です。
目線を鋭くし、相手をこけおろすような感じで、
「てめえはファッションパンクだ」
と言いきってやりましょう。
ここで、相手が自分がファッションパンクではないことをくどくどと説明したり、ムキになって反論してくるようでは、アウトです。
残念ながら、相手はファッションパンクであり、痛いところを突かれたため、気が動転しているのです。

相手が
「あァ?てめえこそ、ファッションパンクだろうが、クソが!」
と短く言い返してきたならば、合格です。
ここまでのチェックでは相手は本物のパンクロッカーのようです。
しかし、まだまだ油断してはいけません。
信用してバンドを組んでいたメンバーが、突然ファッションパンクに変貌するというのは、良くあることだからです。
何事も最初が肝心、このときに相手が本物のパンクロッカーであるかどうか、今後のチェックでしっかりと見極めましょう。

立ち話もなんですから、あなたは、その人と一緒に、どこか近くの軽食店へ入ることにします。
このときが、相手がファッションパンクかどうかを見分ける第3のチェックポイントです。
あなたはさりげなく、「どこに入る?」と相手の意向を尋ねます。

ここで、相手が「じゃあ、スタバで」などと言おうものなら、ファッションパンク確定です。
スターバックスのようなコーヒー1杯ウン百円というブルジョワ店を指定する時点で、この相手は資産階級=ファッションパンクだからです。
スターバックスは貧しい労働者階級の音楽たるパンクロックに相応しい店ではありません。

「マクドナルドに行くぜ、クソッタレー!!」
などと相手が返してきたならば、ひとまず合格です。
やはりプロレタリアートにはマクドナルドが相応しいです。
またジャンクフード=身体に悪い=不健康=パンク、というイメージにも繋がります。

さらにベストなのは、
「ロイホに行くぜ、マックでテイクアウトしてな!クソッタレー!!」
という返答です。
マックは安いが、うるさくて人が多い。クッションも固い。
だからムカつくから、テイクアウトだけして、環境の良いロイホへ行く。
ロイホでは何も頼まない。
この姿勢は明らかにパンクです。
相手はかなりのパンク上級者と見て良いでしょう。

さて、ロイヤルホストへ入ったあなたたちは、とりあえず目の前に広げられたハンバーガー型の家畜のエサを食い漁ります。
このときは、相手を目で牽制しながら、「オレの食い物に手を出すんじゃねえ」という意志を顕にしましょう。
これが第4のチェックポイントです。
もし相手がこちらの意志を汲んで
「良ければ僕のハンバーガーも食べますか?」
など言おうものなら、残念ながら相手はファッションパンクだったようです。
唾を吐き棄て、速やかに席を立ちましょう。

ハンバーガーを食い終わると、相手が不意に席を立ち、あなたに殴りかかってくるでしょう。
不意をつかれたあなたは歯を食いしばる暇も無く、顔面を殴打され、床に叩きつけられます。
しかし、ここで驚き慌てふためいてはいけません。
相手は、あなたが「シド(ベース)に相応しい人材かどうか」をテストしているのですから。
この場合の正解は、もちろん相手を殴り返すことです。

殴り合いは、次第にエスカレートしていきます。
ガラスを突き破って、店外に出るのも良いでしょう。
そして、一通り殴り合いお互いが程よく血だらけになり、顔もボコボコになったならば、成句として成立している次のセリフを切り出しましょう。
以下のセリフは全て成句として完成されているので、一字一句間違えないように暗記し、正確な発音で行うことが肝心です。
ここを間違えると、これまでの殴り合いなどが全て水の泡です。気をつけましょう。

あなた「クッ・・・ハハッ、アハハハハ」
相手「ククッ・・・クククッ」
あなた「オイ、てめー、自分の顔見てみろよ。ボコボコだぜ」
相手「バカか、てめー。てめーの顔こそボコボコだぜ、ククッ」
あなた「ハハ・・・アハハハ」
相手「ククッ・・・・ハハハハハハ」
(二人、しばらくの間笑いつづける)
あなた「(口中の血を吐く)ケッ!てめー、ファッションパンクにしちゃあ、なかなかやるじゃねえか」
相手「ハン!てめーもな。ファッションパンクのくせによ!」
あなた「・・・オイ、気は進まねーけどよ、てめー、オレと一緒にパンクバンドやれよ」
相手「ケッ、誰がてめーなんかと。お断りだね・・・・・・と、いいたいところだが、最近ヒマだしな」
あなた「・・・決まりだな。よろしく、頼むぜ、クソッタレ!」
相手「ハッ!すぐに寝首をかいてやるからな。覚悟しとけよ、クソッタレ!」
(ガッシリと握手する二人。バックには夕焼け)

少々長いセリフですが、頑張って覚えましょう。
基本的にボーカルも、ギターも、ドラムも同じ勧誘法でOKですから、一度覚えてしまえば後は楽です。
また、これはあなたにとって、相手がファッションパンクかどうかを判断する第5のチェックポイントでもあります。
この成句を間違えるようでは、相手はファッションパンクか、もしくはパンクロッカーとしてのレベルが低いのでしょう。
メンバーがなかなか揃わないときは、少々の間違いは大目に見ても良いですが、3箇所以上間違えるようでは、その相手は諦めた方が無難でしょう。

基本的に、以上の流れで相手がファッションパンクか本物のパンクロッカーか、確実に見分けることができます。
もちろん、相手の会話の中に音楽に対する情熱が見受けられないかとか、指にギターたこが出来ていないかなどでも、相手がファッションパンクかどうかを判断することはできますが、やはり上記の伝統的な判別法がオススメです。

ただし、上記の判別法は、あくまでギター、ドラム、ボーカルについてです。
マネージャーに同じような方法を使うと、間違いなく二度と会ってはくれないでしょう。
また、マネージャーの場合は、あなたがメンバー募集をかけたわけではありますが、基本的にあなたが試される側であることを意識してください。
あなたの方からマネージャーを試そうなどと考えてはいけません。
マネージャーの場合には、また違った様式があるのです。
次からはマネージャーの場合について、少しだけ触れていきましょう。

マネージャー候補と会う約束を決めたあなた。
しかし、約束の時間にホイホイと待ち合わせ場所に行ってはいけません。
ここで律儀に時間通りに行ってしまえば、マネージャー候補は「なんだ、ファッションパンクか」と一瞥しただけで帰ってしまうでしょう。

やはり、最低でも3度は約束をすっぽかしたいところです。
マネージャー候補に電話で糾弾されたならば「うるせー、酒呑んで寝てた」「行ったぜ、12時間遅刻したけどよー」などと、言い返しましょう。
こうすることで、マネージャー候補は「こいつ協調性がないな。本物のパンクロッカーだ」とあなたを判断するのです。
これを三国志の故事に倣い「パンク三顧の礼」といいます。

そして3度約束をすっぽかした後ですが、ここからが大変です。
用意するものは、マネージャー候補の電話番号を書いた紙。それと、身一つです。
電話番号を書いた紙をクシャクシャにしてポケットにしまったら、早速、ケンカをしましょう。
相手は誰でも構いませんが、とにかく派出所の近くで行うことが大切です。
そして、警官に止められ、留置所にぶちこまれましょう。
あなたは保証人がいないと、留置所から出ることができません。
しかし、あなたは全く自分の身柄を証明するものを持っておらず、警官の尋問にも黙秘を貫きます。
このあと、あなたはポケットの中のクシャクシャの紙を発見されるまで、気長に待たなければなりません。
運良く、クシャクシャの紙を見つけられ、マネージャー候補に連絡が行けば、あなたはやっとマネージャー候補と会うことが出来るのです。
メンバー募集とは、まさに己の身を削る荒行なのです。

と、ここまでは型として完成されているのですが、残念ながら、この後のマネージャー候補との対応は一概に「こうすれば良い」と言いきれるものではありません。
それは、マネージャーというのは最も独自の能力と感性が試されるパートであり、どのようなメンバーを求めているかは、マネージャーにより千差万別だからです。
ただし、どんなマネージャーであれ、「マネージャーの提案を聞いていない」「カネ貰えるんならどうだっていい」「常に酒に酔っている」という態度のメンバーを喜びます。
そのあたりに気を付けながら、いかにあなたが協調性が無いか、音楽に対してやる気が無いか、などをアピールすると良いでしょう。

・バンド名を決めよう

あなたはとんでもない苦労とケガを負いながらも、なんとか、ボーカル・ギター・ドラム・マネージャーといったメンバーを揃えました。
さて、それではメンバー全員で、自分たちのバンド名を決めましょう。
ただし、ここでも注意しなければなりません。
パンクバンドには、適したバンド名と、適さないバンド名というものがあるのです。
どのような言葉を用いれば、パンクとして正しいバンド名になるのか、それをこれまでの既存のバンド名を参照しながら学んでいきましょう。

良い例
Sex Pistols 唯一無二のパンクバンド、「Sex Pistols」です。素晴らしいですね。性交という意味を表す「Sex」に、発射のイメージを導く「Pistols」。極めて卑猥でパンクです。またリボルバー拳銃は装弾数が6発です。これは「オレたちは6発はイケるぜ!」というセックスアピールにも通じています。
The Clash これも有名なパンクバンドです。そのままストレートに破壊を意味する「Clash」、すばらしいです。このように破壊や性をアピールするバンド名がパンクらしいですね。
DAFTPUNK バンド名でパンクと名乗る直球さがいかにもパンクです。また、DAFTとは「無分別な・愚かな」という意味で、これもやはりパンクらしいタームです。
RANCID 片仮名で書くと「ランシド」。良く知りませんが、シドが入ってるから、たぶんパンクでしょう。

悪い例
GREEN DAY ファック!まさにファッションパンクなバンド名です。とにかくGREENという響きがとても健康的で青汁を思い出してしまいます。パンクに健康なイメージはご法度です。また、パンクバンドは皇室を批判しなければなりませんが、緑の日は昭和天皇の誕生日です。皇室礼賛はパンクではありません!
OFFSPRING これもファッションパンクですね。OFFがなんで付いているのか良く分かりませんが、とにかくSPRING(春)という言葉のうららかなイメージがパンクには似つかわしくありません。曲を聴いたことはありませんが、きっと「もうすぐ春ですね〜」といった曲なのでしょう。シット!
The JAM 上二つほどではありませんが、これも良くないですね。なんだか甘くて美味しそうだからです。人が喜んで食べる=大衆に迎合する、イメージがよろしくありません。「The にがうり」ならもう少しマシですが、最近はにがうりも流行りですね。
Yo La Tengo 良く知りませんが、YOとか入ってるから、たぶんHIPHOPでしょう。ファッションパンクです。

これらの例を見ても分かる通り、とにかくバンド名には破壊的なネガティブなイメージの単語を使いたいですね。
健康的だったり爽やかなイメージを持つ単語は避けた方が無難です。

どうしても良いバンド名が思い浮かばないという人は、仕方ありません。
本当は自分たちで付けた方が愛着が沸くというものですが、以下に私が作ったバンド名を列記しておくので、この中から好きなものを選んで使うと良いでしょう。
なお、このページは多くのパンク入門者が見ているはずです。
ややもすれば、同じバンド名が複数出てくるかもしれません。
ですので、バンド名の後に数字を付けて他のバンドと区別するようにしましょう。
蛇足になりますが、SUM41はおそらくこうして付けられたバンド名だと思われます。
たぶんカナダにはSUM1からSUM40までバンドがあるのでしょう。

【以下のバンド名は著作権フリーです。ご自由にお使い下さい】

  • デストローイ
  • ボンバーズ
  • ケンカマンズ
  • パンクファイターズ
  • バキ
  • ドカーン
  • ドラゴーラ
  • ブレーメン

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