STEP2 「楽器を買おう」



さて。自分がどのパートをやりたいか決まったら、まずは楽器を手に入れましょう。
楽器を手に入れるにはいろいろな方法があります。
店頭から盗む、後輩を脅して手に入れるなどがパンクらしいですが、法治国家たる日本の警察機構をナメてはいけません。
ここでは無難に金銭をもって楽器を購入する場合の方法と注意点を解説します。

・ギターを買おう

さて、ギターを買う場合ですが、ギターに限らず楽器はどれも基本的に高価なものです。
ですので、それなりに慎重に物を選び購入する必要があります。

ギターの購入ですが、まず注意していただきたいことは、一言でギターといってもいろいろなタイプがあるということです。
私たちパンクロッカーが購入すべきギターは、「エレキギター」と呼ばれるギターですが、他にも「クラシックギター」「アコースティックギター(フォークギター)」「エレキアコースティックギター」などがあるのです。
基本的にボディーが厚いのはクラシックギターかアコースティックギターなので、ボディーの薄いものを選びましょう。
しかし、エレキアコースティックギター(通称エレアコ)にはボディーの薄いもの(セミアコ)もあるので、注意が必要です。
良く分からないときは、店の店員さんに聞いてみるのが一番でしょう。
熟練の店員さんであれば、あなたの振るまいとファッションからパンクロッカーだと判断し、黙っていてもエレキギターを勧めてくれるでしょう。

また、初心者が間違えやすいのがギターと間違ってベースを買ってしまうことです。
ベースとギターの見分け方は簡単ですので、覚えておきましょう。
弦が6本あるのがギター、弦が4本しかないのはベースです。
しかし、稀に弦が6本あるベースも存在するので注意が必要です。
6弦ベースは弦が6本あっても決してギターの代わりにはなりません。

なお、エレキギターであっても、買ってはいけないギターがあります。
それは
  • 弦が7本以上ある
  • ネックが2つある(ツインネック)
  • ぞうさんの形をしている
  • etc.......
といったものなどです。
弦が7本以上あるとか、ネックが2つあるとか論外ですね。
「コードは3つしか知らねえぜ」というパンクロッカーがわざわざ音階を広げるような真似をしてはいけません。


(上:ぞうさんギター。とても愛くるしい)

上のような「ぞうさんギター」もよろしくないですね。
パンクとはLOVEではなくDESTROYです。
こんな愛くるしいギターではギタークラッシュもできません。
パンクをするには不向きなギターといえるでしょう。

さて、自分が買うべきギターが決まったならば、早速入手方法を検討しましょう。
とりあえず間違いがないのは、よく雑誌などに載っている「〜〜点セットで19800円」といったギターです。
これらはピックやアンプを始め、明かに不必要な用語集やうさんくさい教則ビデオテープまでがセットになったもので、その値段やあやしさから考えても、間違いなく音はショボイでしょう。
また雑誌の通販でギターを買うというのは、パンクにとって最も大切な「初期衝動」のイメージに繋がります。
イメージ的にも実際の音の面でも、雑誌の通販を利用するメリットは大きいといえます。

どうしても、自分の目で確かめてギターを購入したいと思う人もいるでしょう。
通販を利用することが確実なのですが、しかし、いかんせん高価な買い物ですから、不安になる気持ちも分かります。

あなたが実際に楽器店へ行き、そこで楽器を手にとって確かめるのであれば、その場合は出来る限り、音の悪く弾きにくいギターを選びたいですね。
後述することですが、パンクロッカーたるもの演奏は下手ならば下手なほど有利です。
演奏技術自体は経験を積んでいけばイヤでも巧くなってしまいますが、楽器が弾きにくければ、少しでも上達の度合いを遅らせることが出来るからです。
ですから、楽器選びというのは本当に大切なことなのです。

手にとって楽器を選ぶときは、以下の点に注意してください。
  • ギターは持ちにくいか?
  • ネックが曲がっているか?
  • 板(フレットボード)上の弦が押さえにくいか?
  • 一音ずつ弾いたときの音がクリアに出ていないか?濁った音(弾いた音でない雑音)でかき消されているか?
これらの条件を全て備えたギターが良いギターです。
しかし、通常の楽器店では最も安いギターを選んでも、これほど質の良いものはなかなか手に入らないでしょう。

そこでオススメするのが、近所にある中古ショップです。
といっても、楽器の中古店に行ってはいけません。
そこにはそれほど程度の良いものは期待できないからです。
やはり品揃えが良いのは、家電製品からスポーツ用品まで幅広く取り扱っている総合リサイクルショップです。
私の家の近所には「生活倉庫」というリサイクルショップがあり、ここでは「エレキギター(弦なし)」が4000円で売られていました。
「ギター(弦なし)」の表記からも分かるように、この生活倉庫では「弦が張ってあるかどうか」は単に附属品の問題でしかなく、弦を張っていないことによりネックが反るとか、そういった致命的な問題については全く考慮されていないのです。
素晴らしいですね。この商品に関しては、通販で買うものよりも上質といえるでしょう。

このように、実際に楽器店やリサイクルショップに赴いても、良いものを購入できることはあります。
ただし、これら良い楽器を見分けるのは本当に難しいことなので、初心者一人では間違ってまっとうなギターを買ってしまう怖れがあります。
そうなるとネックを反らせたりするまでにかなりの時間と根気が必要になってきますので要注意です。(上級のパンクロッカーであれば、問題のないギターを買った後、時間をかけてネックを曲げたり、自分の使いやすいギターに仕立て上げるのですが、初心者のうちは最初から「出来あがった」ギターを買うほうが良いでしょう)
一人では不安だという人は、パンクな友人に付いて来てもらい、良い楽器を選んでもらうことをオススメします。

・ベースを買おう

ギターに続き、ベースの選び方を解説します。

まずはベースと他の楽器の見分け方についてです。
前項「ギターを買おう」にて、弦が6本なのがギター、弦が4本なのがベース、と書きました。
しかし、弦が4本だからといってベースだと思い、ホイホイと買ってしまうと、思わぬ失敗をすることがあります。
そうです、マンドリンも弦が4本なのです。

マンドリン:弦が4本に見える(実際は8本) ベース:弦は4本しかない

しかし、マンドリンは実際は弦が8本あり、2本が1セットで1本のように見えるだけなので、よく注意すればベースと見分けることが出来るでしょう。

また、ベースの種類ですが特別の事情がない限りプレシジョンベースを用いるべきでしょう。
理由も何も、シド・ヴィシャスが使っていたベースがこれだからです。
スティーブ・ジョーンズが「ギブソン・レスポール・カスタム」を使っていたからといって、パンクギタリストがギブソン・レスポールを買う必要はないですが(高いですし)、ベースに関してはそういうわけにはいきません。
幸いプレシジョンベースはフェンダーの中では安価な部類に入りますし、パンクベーシストはすべからくプレシジョンベースを使うべきでしょう。

また、ベースというものは単なる楽器ではありません。
後述することですが、ベースというのはパンクロッカーにとって、人を殴るための武器でもあるのです。
ですから、ベースを購入する際には、そのベースが手にとって人を殴りやすいものかどうか、判断した方が良いでしょう。
自分の体格や体力に応じて、ベースの長さや重さを変えることが重要ですね。

人を殴ることを前提に考えるならば、ベースは腰の強いものを選びたいものです。
腰の強いベースは、ボディを床につけ曲げてみるとネックの中メのあたりが基点となって、程よい反発力をもって曲がります(曲がる気がします)。
逆に腰の弱いベースだと、ヘッドの辺りから曲がります(曲がる気がします)。
このような腰の弱いベースですと、打突の後反動が肘手首にきて、腱鞘炎の原因になるので要注意です。

またベースについては、弦の状態にも気を付けたいところです。
あなたが中古でベースを購入しようとしているのであれば、できるだけ弦の錆びた一品を選びたいところですね。
もし、不幸にも新品、もしくは弦の錆びていない中古ベースを買うことになった場合、面倒なことですが、その弦が錆びるまで長期間かけて待たなければなりません。
弦が錆びるまでの間、錆びていない弦から良い音が聞こえるたびに、周りの人はあなたのことを「あいつ弦なんて換えてやがるぜ、ファッションパンクだな」と蔑むでしょう。
仕方がありません。しばらくの間だけですから、耐えて下さい。
弦の表面に酢などを薄く塗れば、少し錆びるのを速めることができます。
一度弦が錆びたならば、その弦は宝です。
もう一生張り替えないくらいの気持ちでいると良いでしょう(実際にはライブ中に弦を引き千切ったりするので、そう巧くはいかないのですが・・・)

・エフェクターっているの?

ギターやベースにはエフェクターという、楽器の音色を変える機械を併用するのが一般的です。
ベースは皆が皆エフェクターを使っているわけでもありませんが、エレキギターに関しては、ほぼ全てのギタリストがエフェクターを使用していると言っても過言ではないでしょう。

では、パンクロッカーの場合、それらのエフェクターを買う必要があるのでしょうか?
答えはNOです。
ベースはもちろん、ギターも基本的にはエフェクターを購入する必要性はありません。

というのは、そもそもパンクバンドにおいては、ギターもベースも「会場をうるさくする」程度の意味しかないからです。
誰も、その楽器から心地良い音色が流れることを期待していません。
ですから、楽器にそんな小細工を弄してまで、わざわざ音色を変える必要なんてないのです。

とはいえ、破壊的なイメージを作るために、ディストーション系だけでも使いたい、というパンクギタリストの人もいるでしょう。
ですが、そんな人もわざわざRATを購入する必要はありません。
アンプについているディストーション(GAIN/DRIVE)ノブをひねれば良いのです。
それだけでは物足りないという人は、アンプの全てのノブをMAXの10までひねりましょう(これを専門用語で『フルテン』といいます)。
こうすることで、ギターサウンドにオーバードライブをかけることができます。
とにかく、パンクバンドがエフェクターなど使っていてはファッションパンクの烙印を押されてしまいます。
いろいろと工夫して、エフェクターを使わずに必要な音色が出せるように試行しましょう。

なお、レコーディングの場合のみ、例外的にフェイザー・フランジャーなどを使わなければならない状況に陥ることもあります。
しかし、レコーディングをするのは、オリジナル曲を作るような、かなりのパンク上級者になってからのことです。
レコーディング時のエフェクターについては、STEP10「レコーディングに挑戦だ」にて、改めて説明します。

・ドラムは買うの?

パンクドラマーが、まず手に入れなければならないもの、それはドラムスティックです。
しかし、ドラムスティックに関してはこれといってアドバイスがありません。
どれを使っても同じだからです。
適当に身近な楽器店にむかい、適当にいちばん安いドラムスティックを購入してください。
あとは折れるまでそのスティックを使いつづければ良いでしょう。
どうしても個性を出したい人は、そこらへんから拾ってきた木の枝などを使うとパンク魂をアピールできるかもしれませんが、力いっぱい叩くことが信条のパンクドラマーにとって、木の枝では少々耐久性に問題があります。

そして、本体のドラムセットですが、これは基本的に購入する必要はありません。
なぜなら、ほとんどのスタジオ・ライブハウスにはドラムセットが常備されているからです。
ギターやベースと違いその場にあるので、あえて自分で買ってまで使う必要がないのです。

ドラムはごく一部のテクニックを除き、基本的に家で練習することもありません。
ドラマーはパンクバンドの中で、最も気軽で簡単なパートだからです。
パンクドラムはハイハットとスネア、それにバスドラムが基本ですので、自前でタムやシンバルを用意する必要もないですし、ツーバスもやりませんから、バスドラもペダルも備え付けのものだけでOKです。
購入すべきものは本当にドラムスティックだけなのです。

しかし、もしかしたら将来的に「ライブ中にドラムを壊したい」と思うようになるかもしれません。
そのときは、さすがにライブハウス備え付けのドラムを破壊するわけにはいきませんから、破壊用に安いドラムセットを揃えておくと良いかもしれません。
ですが、これはまだまだ先の話ですね。

・ボーカルは何を買うの?

買うものはありません!
酒でも買って、呑んで寝てればOKです。
間違ってもボーカルの教則本など買わないこと!それくらいですかね。
ボーカルの教則本は「喉に優しいステージドリンク」など、パンクボーカルにとって有害な知識の塊です。
決して読まないようにしましょう。
もし、あなたのバンドのボーカルが教則本など持っていたならば、こっそり白ポストに投げ込んであげましょう。
あとは、何か勘違いしてハーモニカなど買うことがないように気をつけるくらいでしょうか。

しかし、もしあなたに相当の経済的余裕があるならば、通称”ガイコツマイク”を購入しても良いかもしれません。



上の写真がガイコツマイクです。
これを選ぶ理由は単にジョニー・ロットンが使っていたからです。
また、自前でマイクを持つもう一つのメリットとしては、ライブ中、気がねなくマイクを手荒に扱うことができる、ということもあります。

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